「ぬい活」は「精神的な幼児化の表れ」 精神科医が指摘「根底に強い孤独感が」

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【前後編の後編/前編からの続き】

〈こんな女に誰がした〉というフレーズで名高い歌謡曲が、人々に口ずさまれたのは戦後の混乱期である。およそ80年を経た今日、戦後とはまた別の“混乱”に頭を抱えている向きも少なくないだろう。ちまたに溢れる有象無象の生態から、現代日本の病理に迫る。

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 前編では、三浦春馬さんを巡る陰謀論が盛り上がり、「ポイ活」に1日100分も費やす人が増加するなど、現代日本社会が抱える病理について、専門家の声を紹介した。

 これらと趣は異なるが、陰謀論と同じくSNSを席巻しているのが「ぬい活」である。飲食店や観光地など、至る所に出没しては、ぬいぐるみと一緒に写真を撮り、SNSに投稿する。いい年をした大人が「ぬい活」にいそしんでいる光景は、奇妙と言っても差し支えあるまい。

 実際、東京商工リサーチの調査によれば、21年には504億円だったぬいぐるみの売り上げが、昨年は849億円にまで跳ね上がっている。

「精神分析において、ぬいぐるみは〈移行対象〉と呼ばれます」

 そう解説するのは、精神科医の片田珠美氏。

「イギリスの精神分析家ウィニコットが提唱した概念で、乳幼児が肌身離さず持ち歩くタオルや人形などを指します。母親との分離不安が生じる時期に、子供が“自分は母親とは別の存在である”という現実を受け入れる過程の、橋渡しのような役割を果たします。通常は成長とともに忘れ去られていくものです」(同)

 では「ぬい活」に当てはめるとどうか。

「大人がぬいぐるみに執着するのは精神的な幼児化の表れといえます。根底にあるのは、強い孤独感。一緒に旅行に行くパートナーや子供がいれば、ぬいぐるみを連れていく必要はありません。現実の孤独を直視しないで済むように、代償的満足を求めてぬいぐるみを連れて歩くのです」(同)

 また、ぬいぐるみの写真を投稿するのも特徴だが、

「承認欲求の根底にあるのは〈自己愛〉。SNSの普及に伴い、自己愛を肥大化させた人が自己アピールを発信していますが、そこで問われるのが想像力です。自分の投稿や発言がどのような影響を与えるか想像力を働かせられないと、炎上を引き起こしてしまいます」(同)

 想像力の欠如がトラブルにつながるのは、SNSの中だけの話ではない。東京・墨田区にある大衆酒場「かどや」の店主は、そのような客の言動を問題視してきたことで知られている。話を聞いてみると、

「私はこの世界に入って22年になりますが、日本の客は“自分たちはお客様=神様だ”と勘違いしている人が多いですね。2年前、営業時間を過ぎても帰らない客に“帰ってください”と言ったら、“自分はお客様だ”と文句をつけてきて、ツバをかけられましたよ。“口の利き方がなってない!”と胸ぐらを掴まれて仕事着をビリビリに破られたこともあります」

「カスハラ客」の共通点

 カスハラ(カスタマーハラスメント)に及ぶ客には共通点がある。

「店員に横柄な態度を取る人は“自分が店員だったら”という想像ができないんでしょうね。空気も読めないし、人の痛みも分からない上、ずうずうしく隣の客をナンパする。ウチではそういう客を片っ端から出禁にしています。安い商売をしていますが、客の奴隷になる必要はありませんよ」(前出の店主)

 前出の片田氏は、カスハラ客についてこう分析する。

「精神分析では〈置き換え〉と呼びます。日頃から不満や怒りをため込んでいるのですが、原因である上司や取引先には直接文句を言えません。そのため、言い返せない立場にある店員など、弱い相手に矛先を向けて怒りをぶつけ、鬱憤(うっぷん)を晴らしているのです」

 はた迷惑な人たちはこんなところにもいる。

「近年、皇居ランナーのマナー違反が目に余ります」

 とは、全国紙社会部記者。

「1周5キロのコースを信号なしで走り切れる上、近隣には銭湯やシャワー施設もあるので、皇居の周回は格好のジョギングスポット。ところが、一部のランナーが傍若無人に歩行者を蹴散らしていると問題になっているのです」(同)

 千代田区に聞けば、

「区民からは“後ろから走ってきたランナーに威嚇された”“ランナーと歩行者が接触した”“マナーとして定めてある走行方向を守らずに逆走するランナーとぶつかりそうになった”といった報告があります。SNS上でも危険な状況を懸念する声が見受けられることなども踏まえ、改めて利用実態の調査を実施することにしました」(担当者)

 ここまでくると、やはり人心の荒廃を嘆かずにはいられないのだ。

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