2040年、AI時代に「新興宗教」が隆盛する――『スマホ脳』著者が予測する残酷すぎる未来

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 AI技術の進化が10年前には想像さえできないレベルにまで到達する中、もはやAIの「この先」を予想するのは不可能に近い。だが、新しい技術が人類にもたらしてきた歴史は、未来の輪郭も浮かび上がらせる――。『スマホ脳』著者の精神科医、アンデシュ・ハンセン氏は、人類の“脳の仕組み”から、2040年の未来を展望する。※聞き手・文=湯浅大輝(フリージャーナリスト)

 2040年にAIがどんな未来をもたらしているか、予想するのは困難です。今から14年前の2012年に「2026年の社会の姿を想像してほしい」と聞かれても、「今より機能が増えたiPhoneが登場し、面白いテレビドラマがいくつか作られていただろう」と答えるのがやっとだった、と思います。

 ただ、現代社会における未来予想が興味深いのは、具体的な姿はわからない一方で、「世界は急速に変化するだろう」という一点においては、ほとんどの人が同意する点です。

 つまり、未来は具体的にどんな姿になっているかは分からない、ただテクノロジーが仕事・生活・価値観・文化を劇的に変化させるだろう、という点については誰も異論を挟めないのが現代ということです。

 2040年の未来を決定づける技術は間違いなくAIでしょう。AIはすでに現代の「知性」になったと思います。AI自身が判断し、エージェントとして自律的に行動し、人間社会に大きな影響を与えています。

 そもそも、人類は私たちと同程度、あるいは私たちより賢い存在と共に暮らした経験がありません。加えて、これほどAIが人間に不可欠な存在になりつつあるのに、大多数の人々は実際にAIがどう動いているのかを理解していない、という点もまた不気味です。

二極化する未来

 そんなAIは、2040年の人類にどんな影響を与えているのでしょうか。まず、楽観的なシナリオを考えてみますと、医学研究において黄金時代を迎える可能性があります。

 これまで不治の病だと考えられていた病気に対して、AIが人間には不可能な方法で新しい薬を作り、治療法を確立するかもしれません。

 その一方で、スマホやSNSでただでさえデジタル中毒になっている現状を、AIがより悪化させるかもしれません。AIはSNSのアルゴリズムよりはるかに強力に、人間の注意力をひきつける技術を持っていますから。

 つまり、画期的な研究を生み出すなど、AIによって自らの可能性を開発する人類と、何も分からずにAIに言われるがままに画面中毒になる人類というふうに、二極化する未来が想像されるということです。

AI時代の“空虚”に、人類は「宗教」を求める

 悲観的なシナリオについても展望しておきましょう。

 AIが単に「仕事の生産性を上げるツール」であればよかったのですが、AIは人間と友達や恋人になることもできます。AIが擬似的な人間関係を、ある意味で人間よりもっと精密な形で再現できるとすれば、一種の精神的空白が人間の中に生まれてしまうこともあり得ます。

 人類史を紐解けば、人間は目の前の生活にあくせくするだけでは飽き足らず、神や因果法則、時間と生命の関係性といった、抽象的で、自分よりも大きな物語を信じたいという欲求を常に持ってきました。その欲求は現代人にも当然残っています。

 ところが、AIが人間の仕事を代替し、ユニバーサル・ベーシック・インカム(最低限の生活を送るための現金を政府が全国民に支給する制度設計)のような制度が誕生すれば、人類はもっと暇になるでしょう。しかも、現実の人間関係さえ、AIに乗っ取られている――。

 この空虚に、人間は耐えられるのでしょうか。最近私は、AIが社会に浸透すればするほど、新興宗教が生まれる可能性も高まると思うのです。古来、人類は世界の不条理、認識の不合理、死への恐れの救いを宗教に求めてきました。AIが人間の理性で解ける問題を解けば解くほど、人間は空虚に直面せざるを得ない。そこで、AI時代に適った、新たな宗教が生まれるかもしれないと考えるわけです。

〈AIは意識を持ちうるのかという問い、最近頻発しているAIによるサイバー攻撃、活版印刷やラジオなどの「新技術」が人類にもたらしてきた歴史など、新潮QUEで詳述している〉

湯浅大輝(ゆあさ だいき)
フリージャーナリスト。同志社大学在学中に米アリゾナ州立大学へ交換留学。卒業後、記者としてのキャリアを開始し、経済メディア、小売専門誌を経て独立。教育、小売、海外スタートアップ、国際情勢、インフラなど多様なテーマを取材・執筆している。過去携わった書籍に『フリースクールを考えたら最初に読む本』(主婦の友社)、主な特集記事に「出生数75.8万人の衝撃」「奈良のシカ」(ともにJBpress)、「リニア 20世紀最後の巨大プロジェクト」(NewsPicks)、「精肉MDの新常識」(ダイヤモンド・チェーンストア誌)など。

デイリー新潮編集部