中国外務省が「高市早苗」と呼び捨てにした理由…トランプ大統領が「習近平」国家主席を厚遇したことで「日本との関係改善を急ぐ必要がなくなった」
理解に苦しむ中国の姿勢
日本経済新聞(電子版)は10月3日、「中国、高市氏を呼び捨て 外務省 『首相』使わず敵視鮮明」との記事を配信した。確かに中国が高市首相を敵視しているのは明らかだろう。
だが高市首相と岩屋氏をバカにするような態度を示して中国が何かを得られるはずもない。全く理解に苦しむ発言であり、その意図が分からない。
『ピークアウトする中国「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界』(文春新書:梶谷懐氏との共著)などの著書で知られるジャーナリスト・千葉大学客員教授・明治大学客員研究員の高口康太氏は、中国を取材して「月刊文藝春秋」や「日経クロストレンド」に寄稿するほか、データで中国を読み解くニュースサイト「The Tokyo Desk on china」(ザ・トーキョー・デスク・オン・チャイナ)」を運営している。
謎に包まれた習近平の「思惑」
高口氏に中国側の意図について取材を依頼すると、「今回の呼び捨て問題を考えるには、『そもそも習近平氏がなぜ、あれほど高市首相に怒っているのか、分かっていない部分が多い』との点が重要であり、改めて確認する必要があります」と言う。
「なぜ習近平氏は高市政権に対して敵対的な態度を示しているのか、様々な専門家や関係者が分析や推測を発表してきました。昨年11月7日の衆院予算委員会で高市氏が台湾有事は『存立危機事態になり得る』と発言したことが原因という説も広く流布しています。しかしながら習氏は公には何も言及していませんし、独占インタビューに成功したメディアもありません。しかも本当に人民解放軍が台湾に侵攻すれば、自衛隊が参戦しようがしまいが、中国側に甚大な被害が出るのは確実です。島国を攻略するのは非常に難しいのです。習氏が合理的な判断能力を保っているのであれば、現時点での台湾侵攻には踏み切れません。つまり本来なら高市氏の発言を習氏は受け流しても不思議ではないのです」
高口氏が注目するのは、昨年10月30日に韓国の釜山で開催された米中首脳会談だ。高市首相の台湾有事発言より前という時系列が重要だ。
長期戦にシフトした中国
「大前提として、中国は日本がアメリカ側に立ち、アメリカの求める世界秩序に関与してきたことを苦々しく見ていました。そうした中、昨年1月にトランプ政権が発足し、2月に中国製品に対する追加関税が発動され、中国は日本との関係改善に動きました。ところが、この10月の首脳会談でトランプ氏と習氏は“貿易戦争”を休戦することで一定の合意に達します。これで習氏は『アメリカとの関係が最悪の状態に悪化することは避けられた。この休戦を維持できれば自動的に日本を抑えておくことができる』と判断したのでしょう。日本との友好関係を保つ必要性は10月時点で薄れました。ここで日本を強く敵視する素地ができたと言えるのではないでしょうか」(同・高口氏)
後編【中国が高市首相を“呼び捨て”に込めた「2つのメッセージ」…習近平氏の思惑と、今後の日中関係を左右する「11月開催の国際会議」】では、習氏が長期戦を決めたことで、今後の日中関係はどうなるのか、高口氏の分析をさらに詳しくお伝えする──。
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