芸能人の「タトゥー」はなぜ炎上するのか 40年前の「アグネス論争」から紅白、ミスコンまで…変わる社会の価値観
タトゥー論争
現在の論争は、アグネス論争の時代とは図式が大きく変わった。メディアが主導する論争が激減した。まず、SNS上で論争や炎上が起こる。それをネットメディアが記事化する。さらにスポーツ紙や雑誌、テレビが後を追う。そんな構図が中心になっている。
現在の論争の1つに、芸能人とタトゥー(入れ墨)をめぐる考え方がある。タトゥーを入れている芸能人は相当数いる。アーティストのMIYAVI(45)、優里(32)、RADWIMPSの野田洋次郎(41)ら、挙げたらキリがないほどだ。
だからといって、タトゥーが特別視されなくなったとは言いがたい。そのため、論争になる。4月に女優の三吉彩花(30)が自身のインスタグラムで、背中のタトゥーを披露すると、やはり意見百出だった。
「タトゥー自体は別に好きじゃないけど、三吉彩花は似合いすぎててめっちゃかっこいい」(X、4月21日)、「なんで自分で傷をつけるのか、タトゥー文化がわからない」(同22日)、「これからの三吉さん、桁違いの表現力を期待」(同7月17日)
三吉のタトゥーはネットメディアも相次いで記事化した。「『人に見せたいから入れてる』の声も…三吉彩花 全面タトゥー披露から約1カ月、ちょい見せした“場所”」(6月2日付、『WEB女性自身』)。
記事によると、三吉のタトゥーが見えたのは、Instagramのストーリーズ投稿。さらにSNS上の賛否の声が紹介された。
署名記事は少ない。明快な見解を示すのが難しいのが一因だ。そうした中、桜美林大教授の宮本文幸氏は、ネットメディア『東洋経済オンライン』の4月25日付に寄稿した。
タイトルは「『三吉彩花のタトゥーに賛否』『大野智は長袖で隠し…』文化の違いだけではない、芸能人のタトゥーが炎上する“残酷な心理”」だった。
元・嵐の大野智(45)も左腕にタトゥーを入れている。やはり賛否の声が上がった。それも踏まえたうえで、宮本氏はタトゥーが否定される理由を論理的に分析・解説した。その一部はこうだ。
「少し立ち止まって考えてほしい。タトゥーは違法でも何でもない個人の自由だ」「社会規範を破った者を正したいという本能は人間に普遍的に存在し、日本ではタトゥーに対する『反社会的』という認知フレームが根強いため、批判が『もっともな指摘』として正当化されやすい」
人気音楽ユニット「YOASOBI」のAyase(32)のタトゥーも論争になっている。タトゥーは首や腕などにある。
YOASOBIは2020年と21年、23年にNHK「紅白歌合戦」に出場したものの、24年からは不出場。これについて、タトゥーが理由だと推察する意見も目立つ。「NHKはタトゥーに厳しいからね」(X、24年11月22日)
一方でYOASOBIは放送中の連続テレビ小説「ブラッサム」の主題歌「咲き誇れ」を歌っている。9月28日に同局で行われた同番組の合同取材会にも参加した。Ayaseは首のタトゥーを隠さなかった。
エンタメやスポーツなどを書く評論家の石黒隆之氏は、Ayaseのタトゥーについて、ネットメディア「日刊SPA!」の9月29日付に論考を寄せた。
タイトルは「朝ドラ主題歌も担当するYOASOBI・Ayaseのタトゥーに批判の声…『やりすぎ』と叩く人たちが見落としていること」。論考の一部はこうだった。
「タトゥーを目にした際に不快感や嫌悪感を抱くのは、人それぞれです。その感性自体は否定されるべきものではありませんし、筆者にもその気持ちは理解できます。しかし、同時に、人間には直接的に他者に危害を加えるのではない限り、たとえ本人が不利益を被ろうとも、その種の行為をする権利も保障されています。愚行権というものです」
愚行権とは「他人から愚かと見える行為であろうが、自由に行える個人の権利」である。その行為には、喫煙や過度な飲酒、ギャンブルなどがある。
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