「恫喝」は「覚えていない」のに「撤回」します 簗“恫喝”大臣が問われる政治家としての資質
選挙時の応援演説によれば、高市早苗首相にとっては「私の知恵袋」であるらしい簗和生(やなかずお)農水相の「恫喝音声」問題は、本人が発言を「撤回」「謝罪」するに至っても収束の気配は見られない。
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自身を応援しなかった自治体には予算をつけなくて当たり前との発言は、不倫などとは次元が異なり、まさに政治家の職務そのものに関わるものだけに、「撤回」「謝罪」でお終いとならないのは当然だろう。ご本人によれば「一議員として」の発言だったというが、だからOKとは誰も思うまい。しかも「週刊新潮」が伝えた音声では「筆頭副幹事長」という立場を使ったと自ら語っているのだ。
発言自体の不見識に加えて、議員としての資質が問われるのは、危機管理能力の欠如。デイリー新潮が問題の音声と記事を公開したのは9月30日。その後の簗大臣の対応はおよそ大臣とは思えぬものだった。
まずデイリー新潮、週刊新潮の取材に対して本人は、「われわれはそういうこと、できる立場にないでしょ。行政がやることだから」「覚えてない」とそっけない回答を返すのみ。
10月1日、記事を受けての各社の囲み取材に対しては「大臣就任前の発言」と言うのみでまともな説明はしないまま。
翌2日、閣議後の記者会見でも「大臣就任前の一議員としての活動に関わる事柄なので、大臣としてコメントは控えたい」の一点張りで押し通した。しかし事態が収まらなかったため同日の夕方に再び会見を開き、
「私の表現ぶりが一部、誤解を招くものであったということ、誤解をもたらしてしまうということについては、私の本意ではございません」
と、ひたすら「誤解」だと主張。ただしこの時点では発言が自らのものかについての明言を避けていた。
もちろんこれで納得する人はおらず、週明けの5日にようやく発言が自身のものであると認めたうえで「謝罪」「撤回」を表明。
囲み取材も含めると、この件で4回も会見を行い、そのたびに主張は後退していったわけである。危機管理の面で失敗しているのは明らかだろう。
事態の展開が読めない人
危機管理コンサルタント、田中優介氏の著書『その対応では会社が傾く プロが教える危機管理教室』では、まさに簗大臣が犯したミスがいくつも「やってはいけないこと」として挙げられている。同書冒頭で述べられている「危機管理に失敗する五つの要因」は以下の通りだ。
(1)気が動転して思考停止に陥る
(2)事態の展開の予測を誤る
(3)多方面からの助言に惑わされる
(4)罪の重さの変化を見落とす
(5)二つのトウソウ本能に支配される
少なくとも(3)を除くすべての要因に簗大臣の対応はあてはまりそうだ。
最初に週刊新潮に取材を申し込まれた時点で、ある程度事実を認めるという選択肢はあっただろうが、「覚えていない」と言い張ったのは(1)に該当する。
それに続き「一議員の時のこと」という、身内すら納得できないであろうコメントで乗り切ろうとしたのは、(2)に該当、すなわち「事態の展開」をまったく予測できていなかったことになる。
また、「そもそも政治は利益を誘導するもの」という古い感覚を持っていたのが明らかなので、そうした考え方に世論が厳しくなっている、つまり「罪の重さ」が変化していることを理解できていなかったのは(4)に該当。
(5)の二つのトウソウ本能の「トウソウ」とは「闘争」と「逃走」のこと。非を認めずに闘おうとしたり、説明をせずに逃げ回ったりすることを指す。簗大臣の一連の言動はこれに合致するのは明らかだろう。
「誤解を招く」は禁句
また、簗大臣が会見で用いていた「誤解を招いた」という論法もアウトだ、と田中氏は指摘している。謝罪の際、使ってはいけない言葉は「遺憾」「誤解」「お騒がせし」「知らなかった」「邁進する」の五つ。頭文字を取って「イ・ゴ・オ・シ・マイ」となる。このうち、「『誤解』は相手の側にも半分の責任がある、と言っているのに等しい」ので、使うべきではない、というのだ。
田中氏に改めて簗大臣の一連の対応についての感想を求めると、
「失敗の連続なのは間違いありません。さらに言えば、このままでは事態は収束しないと思われます。簗大臣は一切、何の罰も受けていないからです。私は企業が不祥事を起こした際には、きちんと『罰』を受けてください、とアドバイスしています。贖罪を伴わない謝罪には誰も誠意を感じません。口頭注意程度では誰も罰を受けたとは思わないでしょう」
とのことだった。
それにしても簗大臣が「撤回」したという発言は今年5月のもの。有権者らを前に語った言葉を半年近く経ってから、かくも自在に撤回できるとは、政治家の言葉とはなんと軽いものだろうか。
新潮QUE掲載の「危機管理に失敗する五つの要因」では、上記の五つの要因に関するプロならではの解説がより詳しく述べられている。










