整形依存症の女に、声優業界で光をつかむ女… ルッキズムの時代・令和にガツンとハマる「ダウンタイム」
たとえ美しくなっても、整形した顔には拭いきれない不自然さが残るが、それすらも令和では称賛と憧憬の的になったのねとしみじみ。美容整形は若年化とカジュアル化が一気に進んだ印象がある。この違和感や不自然さを特殊メイクなどで見事に再現し、整形したい人の心の叫びと闇、美容外科業界の裏側をえげつなく描いたのが、Netflix「ダウンタイム」だ。手術中や術後のエグい映像もちゅうちょなく織り込むところは、さすが、監修・高須クリニック。
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主役・沼田文(ふみ)を演じるのは松岡茉優。医大病院の救急医としての技術と矜持と倫理観はあるが、継父(増子直純)が抱える2億円の借金を担がされて、やややさぐれ気味。母(永作博美)は肝臓を患いつつも場末のスナックを営む。純粋な異父弟(武田創世〈そうせ〉)のためにも稼ぎ頭の自分が医師をやめるわけにはいかず。茉優、がらっぱちに迫力が出てきて、すごくいいと思う。
救急で運ばれてきたある患者のせいで、文の人生は一変。人気インフルエンサー・かなぶん(景井ひな)は胸に腫瘍があるのに、豊胸手術でシリコンを入れていた。救命のためにシリコンを抜去した文だが、逆に激怒される。しかも、かなぶんは遺書を残して抗議の自死。案の定、文は世間で大炎上、医大病院をやめるはめに。文は医師として間違ってはいない。批判されるべきは腫瘍の存在を知りながら豊胸手術をした医師だ。真実を探るために、事情通の暴露系美容インフルエンサー・ヲ蔵ちゃん(長井 短〈みじか〉)の協力を仰ぐ文。結果、執刀医は自称「神の手の継承者」、有名美容外科クリニック院長の遠山凜(仲 里依紗)だと判明する。
逆に、凜が文に打診してきたのは、文を医師として雇い、2億の借金を肩代わりするという提案。文の持論は美容整形は人体に対する侵略で、生まれ持った容姿や加齢を否定することは無意味。美容外科そのものに否定的だったが、真相を暴くために凜の提案に乗る。
女性客の客寄せパンダとなるイケメン医師(間宮祥太朗)や、顔出ししない影武者医師(中川家礼二)がいるだけでなく、顧問弁護士(田村健太郎)と元刑事の秘書(篠井英介)が鉄壁の防御を担う。ネガティブなクチコミを処理する専門部署もあり、トクリュウも顔負けのシステムで、芸能界だけでなく政界でも御用達のクリニックだ。
奇々怪々の美容外科の世界で、美を求める女性たちの欲望と狂気に触れ、最終的には文も身をもって美容医療の本質に向き合うことになる……という展開だ。
姿かたちを変えることで得られる満足感を体現していく顧客たちが、生々しくて目を奪う。ルッキズムが跋扈(ばっこ)する声優業界で光をつかんだ女(天野はな)、がっつり整形を望む末期がん患者(研 ナオコ)、整形依存症の女(安達祐実)に、ひそかなコンプレックスを解消した専業主婦(野呂佳代)など。背景は皆違えど、整形がもたらすのは「主語の奪還と覚悟」だ。
描写は露骨で衝撃的だが、凜の父(渡部篤郎)が掻き回すなど、本筋は「親子の確執」で、案外、根が深い。ルッキズム隆盛期の令和にガツンとハマる作品である。



