89歳「伊東四朗」の引退宣言に“絶賛の嵐” コントもドラマも「ダレてやるなよ、絶対に」を貫いた喜劇役者の真骨頂
俳優の伊東四朗さん(89)が90歳の誕生日を迎える来年6月に引退することを表明しました。その決断と潔さに、芸能界だけでなく、各方面から驚きや称賛の声が上がっています。デイリー新潮で連載中の「人生を変えた『あの人』のひと言」では、9月5日配信の記事で伊東さんの仕事に対するプロフェッショナルぶりを紹介しました。連載を執筆しているコラムニスト・峯田淳さんが、引退表明を受け、改めて伊東さんの素顔を紹介します。
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衝撃の引退宣言
伊東四朗ほど喜劇役者にして名優と語るにふさわしい人はいないと思いつつ、連載コラムで取り上げたのはほんの1カ月ほど前のことだった。
先週は脚本家の倉本聰(享年91)の訃報が届いた。その直後に「あんたがたタフマン」のCMでおなじみの伊東が引退表明で世間を騒がすとはまさに虚を突かれたが、その引き際の見事さは後々まで、語り継がれることになるのではないだろうか。
7月には著書『板東英二の生前葬』(双葉社刊)のお手伝いをした坂東が86歳で亡くなり、8月には女優、岸恵子が93歳でこの世を去った。さらに、北大路欣也(83)ら、ベテラン俳優たちの体調不良が多く伝えられる中、卒寿を前にしても、バリバリの現役だった伊東が引退宣言して時の人に。今風にいえば、御年89歳でこんなに話題になるのは「持ってる」ということだろう。
伊東は光り輝くスターではない。コメディアン、喜劇役者からの叩き上げで電線音頭、タフマン、朝ドラ「おしん」で知られ、刑事ドラマでは主役も張ることができる稀有なタレントである。
コラムでは驕らず、後輩の面倒見もいい、類まれなる人間性に迫った。それらを含め、改めて伊東を深掘りしてみたい。
そもそも最初から頂点を目指したわけではないどころか、喜劇人になったのは単なる成り行き。伊東の著書『この顔で悪いか!』(集英社)から。
〈植木等さんじゃないけど、"そのうちなんとかなるだろう"って考え方で、のんびりいくのがいいんです。そもそもほかの役者さんのように試験を受けて劇団に入ったとか、ミュージシャンから転身しましたとかいう確かな経歴も、目的意識もなく、通い詰めていたストリップ劇場の客席から舞台にひっぱり出されてこの世界に入っちゃたんだから〉
自然体。肩にまったく力が入っていない。
新宿フランス座出身の石井均一座に入ってきっかけを掴む。メジャーになったのは「びっくりしたなぁ、もう」のギャグが大受けだった三波伸介、戸塚睦夫と「てんぷくトリオ」を組むようになってから。
そして、なんといってもバカバカしさの頂点は、小松政夫とのコンビで生み出した一連のギャグだ。長くなるが、小松の説明を引用する(小松にインタビューした連載「これからもギャグ人生」から)。
〈70年に始まった土曜日昼のTBSの生放送「お笑いスタジオ」。伊東さんがドサ回りの座付き作家兼演出家、私は花形役者といった役どころ。そして、75年、この番組と同じ枠で「笑って!笑って!60分」が始まります。私が演じる"小松の親分さん"を子分の伊東さんが慰めようと「ズンズンズン」とやると、私がどんどん乗せられていくパターン。
さらに、76年秋から始まった「みごろ!たべごろ!笑いごろ!」の電線音頭。あの頃、2人のコンビは最強でした〉
年配の人なら、なんとも言えない奇妙な衣装に身を包んだベンジャミン伊東が、「人の迷惑顧みず」と語った後、 ♪チュチュンガチュン チュチュンガチュン 電線にスズメが3羽~と歌う「電線音頭」を思い出すだろう。
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