所属モデル全員が整形、卒アルまで修正…Netflix1位「ダウンタイム」が描く美容整形外科業界の“裏側”
整形悲話
文は医師を守ろうとしない病院側に幻滅し、自ら「辞めます」と宣言する。こうして無職になった。困ったのは、継父の沼田高志(増子直純)である。高志は投資に失敗し、闇金からの2億円の借金を抱えていた。文の給料は、返済を待ってもらうための担保にされていた。
高志役の増子はロックバンド・怒髪天のボーカルだが、映画やドラマにもたびたび出演している。説得力のある演技をする。この物語でも、困った人なのに憎めない高志を好演している。
文の母親で、自宅兼スナックの「いってんばり」を経営する沼田妙子(永作博美)は楽天家。将来のことなど一切考えないから、借金にも文の失職にも動じない。
しかし、担保がなくなったため、闇金の取立人・槇原廉(萩原利久)から一家全員が脅されると、さすがの妙子も怯む。文も無職になった責任を感じた。やむなく文は、休む間もなく医師としての再就職先を探し始める。
そんな文に目を付けたのが、遠山美容外科クリニック院長で、美容整形外科医の遠山凜だ。仲里依紗(36)が演じている。文は形成外科医だが、技術面では美容整形外科医とさほど大きな違いはない。
形成外科医は、ケガや火傷などによって損なわれた顔や体などを修復する。一方、美容整形外科医は、本人の希望に応じて顔や体などを美しく整える。共通する部分が多い。
凜は、渡部篤郎(58)が演じる父親・遠山新からクリニックを引き継いだ。新はカリスマ的な美容整形外科医で、凜もスター医師だった。しかし、どうしても文のような腕の良い医師が必要だった。凜には医師生命に関わる重大な秘密があった。
凜は強気な性格で、さらに選民思想を隠そうともしない。嫌味な人物だが、本当は脆く、孤独を抱えている。複雑な人物を演じるのを得意とする仲に似合った役柄だ。
文は、凜に高志の借金を肩代わりしてもらう代わりに、遠山美容外科クリニックで働き始める。だが、もともと美容整形外科に強い反感を抱いている。
そのうえ、文は佳奈の体内にシリコンを入れたのは遠山美容外科クリニックだと知っており、憤りを抱いていた。文はクリニックを破壊するのか。それとも考えをあらため、凜の期待に応えるのか。
文と凜の話が最後まで物語の骨格となるものの、患者の側に立った数々のサブエピソードがあるから、観る側を片時も飽きさせない。サブエピソードはいずれも人間臭く、作品に深みも与えている。
たとえば、資産家令嬢・鴻池紗良(Koki,)は、凜による美容整形外科手術を受けている最中に、ある障がいを負ってしまう。そのことを理由に、凜に対して陰湿な精神的嫌がらせを続けている。
木村拓哉(53)と工藤静香(56)の愛娘であるKoki,は23歳になった。障がいを悲観する一方で、本当は凜を慕っている紗良の複雑な感情を、繊細に表現している。
板井沙緒里(安達祐実)は30代のキャバクラ嬢。バツイチで息子が1人いるが、元夫が育てており、なかなか会わせてもらえない。その淋しさを紛らわせるため、無意識のうちに美容整形外科手術を繰り返し受けている。整形に依存している。
だが、良い患者ではない。さまざまな美容整形外科医院へのクレームが常態化しているため、遠山美容外科クリニックのブラックリストに載っている。それでも文は沙緒里の担当医を買って出る。2人は分かり合えるのか。
沙緒里はキャバクラでも孤立しており、美容整形外科医院だけが拠り所になっている。整形通いをしているため、金もない。精いっぱい整えたはずの顔も、美しくは見えない。沙緒里の日々は観ていて痛々しく、悲しみを誘う。安達は相変わらず名演を見せている。
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