ペット、家畜の「命の選択」に毎週泣いてしまう「リラけも」 獣医モノとしてはトラウマ級の研鑽を積む姿に感動

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 動物と共に暮らす人は多い。愛する小さな命が健やかに生きて、天寿を全うできるよう、人間は惜しみなく金も時間も使って下僕と化す。もし健康でない場合、重要なのは相性のいい獣医師だ。わが愛猫も昨年がんを患い、余命宣告を受けたが、経験豊富な腫瘍専門医に出会えた。治るわけではないが、QOLを維持しながら穏やかに死を迎えられるよう、適度な距離感(うそも奇麗事も言わない)で見守ってくれる。患部は肥大しているが、まだ食欲もある。余命宣告からまもなく1年。本来の生命力の強さと、抗がん剤の効果もあるが、頼もしい獣医の存在は大きい。ってことで、主人公が獣医の「リラの花咲くけものみち」シーズン2を、無駄に感情移入しながら見ている。

 幼いときに母を亡くし、父が再婚したものの、継母と折り合いが悪く、さらに愛犬の死を経験。大きな喪失感から10代の大半を引きこもって過ごした岸本聡里(さとり/山田杏奈)が、祖母(風吹ジュン)に救い出される。学校に行けなかった分を猛勉強で取り戻し、獣医を目指して北海道の大学へ入学。人と接するのは苦手だったが、友達や先輩、立派な獣医と出会い、青春を謳歌(おうか)しながらも、経験を積んでいく。それがリラけもシーズン1。あまりに短かったので、続編が必ずあると信じてたわ。

 シーズン2では無事に獣医となり、生産動物を専門に選んだ聡里の逡巡と成長を描く。内気で頑固で不器用だった聡里がすっかり頼もしくなってね。とはいえ、現場で「命の選択」の壁にぶつかりまくるわけですよ。

 まず、バイト兼修業していた動物病院では、親が飼っていた病気の猫の治療を拒む息子(尾上寛之)や、愛犬の安楽死を希望する飼い主(竹原ピストル)が訪れる。聡里は納得がいかないが、それぞれの事情を知り、院長(山崎静代)の冷静な対応に学ぶところも。また、一頭でも感染すれば、その牧場の牛が全頭殺処分になってしまう「口蹄疫」の現場にも直面。安楽死や殺処分という悩ましく厳しい現実の連続。獣医モノとしては、トラウマ級の研鑽を積む姿を描く、希少で真摯な作品だ。「命の選択」というテーマが身近にあるので、わりと毎週むやみに泣いている。

 で、聡里の仲間たちも壁にぶつかっている。獣医学類にいながら動物が苦手な梶田綾華(當真あみ)は製薬会社に就職、動物のための薬を開発したいが、非協力的な牧場主の説得に難航中。聡里に恋心を抱き続けている久保残雪(萩原利久/りく)は憧れのタンチョウ飼育に携わるが、思い通りにはならず。聡里の初恋の相手で先輩の加瀬一馬(佐藤寛太)は恋人(石橋静河)とすれ違い、就職した病院の方針が合わず転職。

 動物の命を預かる獣医師の世界で、悩むのは若者だけではない。聡里の師匠でもある能見正也(甲本雅裕)や、家畜保健衛生所の犬飼健太郎(上川隆也)らベテランにも苦悩やトラウマがある。命を救うだけでなく、命の終わりに立ち会うのも獣医の仕事。重責と覚悟がじわじわと伝わってくる。

 軽薄な考察や推理ではなく、命の選択肢を「考える」ドラマを粛々と味わう晩夏。

吉田 潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2026年9月24日・10月1日号掲載

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