ただのパニック映画ではない韓国映画「1971、ハイジャック事件」の恐ろしさ…実際には、ハイジャック機が北朝鮮に強制着陸して「乗客が帰国できない」ケースも
家族が北朝鮮にいるので……
犯人ヨンデは、極貧の家庭に育った。彼には兄がいたのだが、この兄が、朝鮮戦争中、北朝鮮にわたって将校になっていた。
「朝鮮戦争の間、北朝鮮軍がソウルをふくむ韓国側のかなりのエリアを制圧した時期もあったことから、韓国から北朝鮮にわたって、“向こう側の人間”になったひとは、何万人もいるといわれています。ところが、彼らが自らの意志で北にわたったのか、あるいは強制的に捕虜として連行されたのか、はっきりしていない例が多いのです。しかし韓国政府としては、膨大な数の人間が北にわたっている以上、のこされた家族と連絡をとっている可能性が否定できない。特にこの映画は、朴正煕(パク・チョンヒ)軍事政権下による監視社会の時期を描いています。よってヨンデとその母は一種の“連座制”と、当時強化された反共法への抵触で、“北朝鮮のスパイ”として徹底的に差別されるのです」
ヨンデは成績優秀だったが、進学もかなわず社会で孤立する。さらにでっち上げの罪で逮捕、投獄され、その間に母親は餓死していた。追い詰められたヨンデは、韓国社会に見切りをつけ、いっそ北朝鮮にわたって兄とともに“英雄”になろうとの考えに至る。
「このあたりをなんとなく頭の片隅に置いて観ると、たいへん深みのある映画であることが感じられます。いわばヨンデは、当時の韓国社会が生んだ“哀れな犠牲者”ともいえるのです。もちろんだからといって、ハイジャックが許されるわけではありません。ただ、単なる狂気では片づけられないようにも思えるのです。映画ではそこまではっきりとは描かれませんが、主人公の副機長テインは、実はそんな彼の背景を理解しているようにも見えます。ベテラン俳優のハ・ジョンウが、そのあたりを実にうまく演じています」
犯人と乗員乗客59名を乗せたフレンドシップ機が、軍事境界線に到達するまでの「50分」をリアルタイムで描き、映画はまさに怒涛の展開となる。果たして乗員乗客59名はどうなるのか。犯人ヨンデ、副機長テインの運命は……。
映画「1971、ハイジャック事件」は、11月13日(金)より全国ロードショー公開となる。
「1971、ハイジャック事件」配給:ツイン
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