山中出馬でも「原澤一強」なのか――横浜市長選は無党派票とIR政策が左右 地元市議が読む複雑な構図
「原澤一強」で決まり――。そんな見方が広がりつつある横浜市長選だが、果たして本当にそうなのか。自民党が推す弁護士・原澤敦美氏(59)の周辺には経済界やIR推進派が集まり、対する各党も思惑が入り乱れる。さらに、パワハラ問題で辞職した山中竹春前市長(54)が28日にも出馬表明すると報じられるほか、前回選で2位だった田中康夫氏の動向や、いまだ態度を決めていない連合の存在も無視できない。水面下で何が動いているのか。横浜市政を知る市議が、知られざる選挙戦の構図を明かす。
前回は山中氏が得票率52%で再選
山中竹春市長の辞職に伴い、横浜市長選挙が実施される。投票日は10月18日。10月4日の告示を前に各陣営の動きが本格化している。
自民党は弁護士の原澤敦美氏を推薦することを決定。一方、立憲民主党は中谷一馬氏を支援するなど、前回選挙とは異なる政党配置が鮮明になっている。
こうした情勢について、
「原澤一強という風には楽観できません」
と語るのは、さる横浜市議の一人である。
ちなみに、前回2025年8月の市長選では、現職の山中氏が663,876票、得票率52%で再選された。対抗馬の田中康夫氏は264,740票、得票率20.74%に終わっている。
「前回の市長選では、自民党、公明党、立憲民主党など主要政党の多くが山中氏を支援しました。そうした政党が今回新たに別の推薦候補を立てて戦うわけです。その動きを有権者がどう受け止めるかはまったく予測がつきません」
今回、前回とは異なる構図で各党が候補者を擁立・支援することについて、市議はこのように指摘する。
田中康夫氏の動向も焦点
そのうえで、市議が注目するのが田中氏の動向だ。
「完全な無所属・無党派として出馬すると見られる田中康夫氏の動向次第では、既存政党に失望した有権者の受け皿となり、大きな台風の目になる可能性があります」
田中氏は前回選にも無所属で立候補し、2位となった。
政党・支援団体の動きも一枚岩ではなさそうだ。
「政党や支援団体の動きも複雑です。まだ連合は、支援する候補者を決めていません」
さらに市議は、辞職した山中前市長をめぐる過去の動きにも触れ、こう語る。
「山中氏が謝罪会見や講演会を開いた際には連合のOBが関わっていたため、表向きには山中氏を支援する可能性はないとしても、裏で支援する可能性は十分にあります」
その山中氏は28日に市内で開く後援会で意思表明するとみられ、田中氏と同じく台風の目になりうるだろう。また、連合の対応をめぐっては、原澤氏のマニフェストも一つの判断材料になるとみる。
「連合は原澤氏のマニフェスト発表を見極めようとしていますが、そうしたなかで国民民主党が単独で原澤氏の支援を決定したため、連合は股裂きの状況に置かれているのです」
「政治経験のなさ」が公開討論会で焦点に?
原澤氏について、市議は人物面では一定の評価を示す。
「原澤氏はまじめで、まともな人間という印象を受けましたが、いかんせん政治経験がない。横浜市政にこれまでかかわっていなかったため、経験不足は否めません。公開討論会になれば、そのあたりを詰められるでしょう」
原澤氏は9月10日に正式に出馬を表明。弁護士として企業の社外取締役などを務めてきた人物で、横浜で長く暮らしてきたと説明している。
そして、市議が「避けては通れない」とするのが、かつて横浜市を二分したIR=統合型リゾートの問題だ。原澤氏自身は出馬表明の際、IRを「やらない」と明言しているが、
「彼女を擁立し担ぎ上げている取り巻きはIR推進派ばかり。首都圏の横浜は関西の大阪に対抗する有力候補となります」
あくまで市議個人の見立てだが、このように分析する。
「もし私が彼女の立場なら、選挙では『やらない』と答えつつも『進める場合は住民投票を担保にする』といった条件をつけるでしょう。ですが、実際の彼女は過去のIR議論や住民投票運動の経緯をよく把握していないため、そこまで踏み込んだ発言ができないでいます」
経済界の支援と「集票力」は別物
そんな原澤氏が擁立されることになったのはなぜか。
「彼女を支援しているのは、横浜商工会議所を中心とする経済界や自民党内のIR推進派です。自民党市議の本音はIR推進です。人口減少と少子化が進む横浜において、住民サービスを落とさずに税収を増やす切り札はIR以外にありませんから」
そのうえで、
「単年度でこれだけの財源をもたらす代替案は存在しない。そのため、本人が否定していても、最終的にはやるだろうと見ている人は少なくありません」
一方、経済界や業界団体の支援がそのまま大量の得票につながるわけではないという。
横浜市独特の“港湾関係者”の影響力についても、市議は慎重な見方を示す。
「横浜経済界の3分の1は何らかの形で港に関わっており、その裾野の広さから資金を集める力は高く、選挙運動を維持する資金源としては強力です。しかし、それが直接的な集票力につながっているわけではありません」
その構図を医師会になぞらえ、
「医師会は比例代表などで自らの候補者を上位当選させる力はあっても、一般的な地方選や国政選で特定の非医師候補を応援しても大きな票は集まらない。港湾も同様で、影響力があるように見せてはいるものの、実際の集票力は限定的でしかないと言われています」
では、最終的に選挙戦を左右するのは何なのか。
最後に問われる「無党派」の判断
市議が挙げるのは、政党支持層ではなく無党派層だ。
「自民党の政党支持率が30%あったとしても、自民党が応援したからといって有権者がすんなり投票するほど甘くはありません。無党派層がその時々の情勢や課題を見極めて投じる票が、最大の勝敗ラインとなります」
そして、
「無党派層の判断材料としてSNSやメディア報道が大きな影響を与えます。全体的な投票率は低いと予想されますが、現職の山中市政に対する関心の高さから、一定数の有権者が確実に投票所へ足を運ぶと考えています」
告示まで残された時間はわずか。政党推薦の組み合わせ、無党派候補の動向、IRをはじめとする政策論争、そしてSNSやメディアを通じた情報発信。複数の要素が交錯するなか、10月18日に投票所へ向かう有権者が何を重視するのかが、選挙戦の大きな焦点となる。
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新潮QUEで配信中の記事【波乱含みの「横浜市長選」 ポイントは「候補者の弱点」「組織票の行方」そして「台風の目」】では、出馬が噂される複数のキーマンの近況など、混迷度合いの増す横浜市長選のポイントを詳しく報じている。


