豊昇龍「3場所連続休場」を責めていいのか いまこそ考えたい「公傷制度」復活の是非

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 横綱・豊昇龍の3場所連続休場に、厳しい目が向けられている。たしかに横綱は大相撲の最高位であり、土俵に上がることを期待される立場だ。しかし、手術を要するほどの怪我を負ったアスリートに「横綱なのだから出ろ」と迫ることが、本当に相撲界のためになるのか。むしろ問うべきは、怪我をした力士が治療に専念できない現在の制度ではないか。かつて存在した「公傷制度」を手がかりに、豊昇龍の休場が突きつけた大相撲の構造的な問題を考える。

大谷翔平には決して向けられない批判

 横綱・豊昇龍の“3場所連続休場”に、厳しい声が上がっている。

 大相撲秋場所は9月13日に初日を迎えたが、豊昇龍は初日から休場。7月場所で右膝を負傷して途中休場すると、7月29日に靱帯を修復する手術を受けた。9月場所前の段階でも相撲を取る稽古を再開できず、治療と調整を優先せざるを得ない状態だった。日本相撲協会の公式記録でも、5月場所は0勝2敗13休、7月場所は7勝7敗1休、そして9月場所は初日から休場となっている。

 つまり、少なくとも今回の休場については“サボっている”といった話ではない。実際に手術を必要とする怪我を負っているのだ。

 それでも“横綱なのだから出場すべきではないか”“3場所連続休場は長すぎる”という批判が出ているのである。

 だが、ちょっと待ってほしい。

 現在、右上腕二頭筋と左膝の故障で負傷者リスト入りしていた大谷翔平に対して、“チームの主力なんだから出ろ”と言う人がどれほどいるだろうか。

 もちろん、大谷と豊昇龍では競技も制度も違い、単純比較はできないが、“怪我をしたトップアスリートを、治療が十分でない段階で試合に出すことが本当に正しいのか”という問題については、考える材料になるだろう。

“ランキング”と“番付”は似て非なるもの

「豊昇龍が批判される背景には、本人の問題というより、大相撲独特の“番付”という制度があるからではないでしょうか」

 こう語るのは、スポーツライターの小林信也氏である。

 大相撲には番付がある。日本相撲協会は、本場所の成績に応じて力士の昇降を決め、それを番付として発表している。

 一見すると、テニスやボクシングのランキングと似ているようにも見えるが、決定的に違うところがある。

 テニスではランキングを落としたとしても、再び勝ち上がれば上位大会の舞台に戻ることができる。ランキングが低ければ大会によっては出場資格やシード権などで不利になるが、実力を示せば再び大舞台へ戻る道が開かれている。ランキングが下がればタイトル挑戦から遠ざかるボクシングも、試合に勝ち続ければ再びランキングを上げ、世界タイトルを狙うことができる。

 つまり、多くの競技におけるランキングは「現在の立ち位置」を示すものである。

 一方、大相撲の番付は、これらの競技と比べるとはるかに重い。

「力士が長期間休場すれば、番付そのものが大きく下がってしまう。たとえ元大関や元関脇といった実績があっても、怪我による長期休場をすれば、休場は負けとみなされるため、復帰時には大きく番付を落とすことになります。その結果、怪我をした力士は“治療するか、番付を守るために出場するか”という、極めて難しい選択を迫られるのです」

 ここが大相撲の特殊なところである。

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