「多少、人間性に不安があっても…」プロ野球で不祥事続発 スカウトが語るドラフト候補の“素行調査”の現実
いよいよ佳境を迎えているプロ野球のペナントレース。しかし今年は、そんな熱戦に水を差すような選手の不祥事やトラブルが相次いでいる。【西尾典文/野球ライター】
相次ぐ不祥事
春季キャンプ直前の1月27日には、羽月隆太郎(当時・広島)が「ゾンビたばこ」などと呼ばれる指定薬物エトミデートを使用した疑いで逮捕された。その後起訴され、2月には球団から契約を解除されて自由契約となった。5月には広島地裁で拘禁刑1年、執行猶予3年の判決を受けている。
8月には伊原陵人(阪神)が酒席での女性とのトラブルを報じられ、球団は報道内容について事実関係がおおむね一致していると説明。8月20日には出場選手登録を抹消されている。さらに9月2日には、村上泰斗(ソフトバンク)が元交際相手の女性とその知人に暴力を振るったとする報道もあった。球団は「当事者間で認識が異なる事項もある」と説明しており、現時点で球団から処分は発表されていない。その後も村上は二軍戦に登板している。今年一軍デビューを果たした期待の若手だっただけに、ファンからは失望の声も多く上がった。
他競技の選手や一般社会でも同様の不祥事はもちろんあるが、注目度の高いプロ野球選手だけに大きな話題となり、選手本人だけでなく球団に対しても厳しい声が集まることになる。しかし、ある球団の編成担当者は、選手個人の不祥事で球団まで過度に批判されることには違和感があると話す。
「球団と選手は、一般的な会社と社員の関係とは少し違います。選手は税務上は個人事業主として扱われ、球団とは統一契約書に基づいて選手契約を結んでいます。もちろん所属選手が不祥事を起こせば、球団にも説明責任はありますし、謝罪を行うこともあります。ただ、問題を起こした選手本人が負う責任も大きい。統一契約書には、球団の信用を失墜させる行為などについての規定もあります。何かあった時に自分自身が背負う責任も大きいという意識は、まだまだ薄いのが現状だと思います」
多少人間性に不安があっても
2021年には清田育宏(当時・ロッテ)がコロナ禍における球団ルールに違反し、度重なる個人的な不祥事が重なったことで契約解除となった。清田は契約解除が違法で無効だとして、選手としての地位確認や約9700万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴。その後、訴訟を取り下げ、球団と裁判外で和解している。この例からも、不祥事が選手生命そのものを左右することが分かる。
一方、球団からすると、不祥事を起こすような選手を獲得することは、企業イメージを考えても大きなリスクである。そのため、新人選手の獲得を担当するスカウトは、選手の人間性を見抜くために視察を繰り返し、ドラフト会議前には面談を行っている球団も少なくない。ただ、選手の人間性を完全に見極めるのは容易ではないという。ある球団のスカウトはこう話す。
「ドラフトで最終的に指名する選手は、支配下で5~6人程度、育成を含めても10人くらいの球団が多いですが、当然リストアップしている選手はその何倍もいます。育成選手を多く指名する球団なら、最終的な候補が100人以上になることもある。それだけの人数の選手について、くまなく調査するのはなかなかできません。もちろん、よほど素行に問題があると分かれば指名対象から外すこともあります。ただ、野球の実力が抜群だった場合、多少人間性に不安があるから指名をやめようとは、なかなかなりません。そうなると、こちらが頼るのは指導者です。多くの選手を見てきた指導者が大丈夫だと言えばある程度安心しますし、逆の場合もあります。ただ、当然ながら指導者も万能ではありません。担当した選手が不祥事を起こせば、スカウトの責任を問われることもあります。だから入団してからも、定期的に連絡してフォローするようにしています」
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