片山財務相にとっては「織り込み済み」 “今や私が胴元”発言がターニングポイントに

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円キャリー取引

 高市早苗首相は「責任ある積極財政」を志向し、日銀の追加利上げについても慎重なスタンスだとみられてきた。それだけに、一連のベッセント氏の言動は日本国内から「内政干渉ではないか」との指摘を招いた。では、なぜ米国の財務長官が、ここまで日本の円相場や金融政策に踏み込むのか。

「ベッセント氏が恐れているのは、円安そのものというより、むしろ円安を支えてきた巨大な資金フローが逆回転し、それが米国の金融市場に波及することだと見られています。現在の円相場を考えるうえで無視できないのが『円キャリー取引』です。低金利の円を借り、金利の高いドル資産などに投資する取引は、長年にわたって世界の金融市場に巨大なポジションを形成してきました」(同)

 円キャリー取引の怖さは、相場が逆回転を始めたときにある。

 円を借りてドルなどを買っていた投資家にとって、円安は利益を生む。しかし、円高に転じれば話は逆だ。円を買い戻して借りた円を返済する必要が生じる。しかも、その動きが一斉に起これば、円買いがさらなる円高を呼び、円高がさらにポジション解消を促すという連鎖が起こり得る。1998年のアジア通貨危機についても、円キャリー取引や国際的な資金移動が市場の変動を増幅したとの分析はあるが、より顕著に市場にインパクトを与えたのが2024年8月の世界同時株安だった。

急な円高の背景

 日銀が同年7月31日に追加利上げを行ったことに加え、8月に入って米国の景気減速懸念が強まり、日米金利差が縮小。膨らんでいた円キャリー・ポジションの解消が一気に進み、日本株をはじめ世界の株式市場が急落した。日経平均は8月5日、1987年以来となる12.4%の急落を記録している。

 ベッセント氏がここ最近、円相場や金融政策に内政干渉を続けたのは、上記と似た構図が再び見え始めたからなのかもしれない。

「高市首相はともかく片山さつき財務相にとってベッセント氏の一連の発言にサプライズはなく、織り込み済みでしょう。むしろ発言を歓迎している可能性さえありますね」(同)

 9月上旬のドル円相場は急速に円高方向へ動いた。9月2日の160円前後から9月9日の153円前後まで、数営業日で約7円の円高を記録した。

「8月以降に積み上がっていた投機筋の円売りポジションがさらなる日米協調介入への警戒、日銀の追加利上げ、そしてベッセント氏の強烈なシグナルをきっかけに解消され始めたと見られています。注視すべきはたとえば年末までにさらに円高が進むのか、どのあたりで落ち着くのかという点でしょう。そこまで急に円高水準に進むと見ている専門家は現時点で多くはないですが」(同)

 評価はさまざまあるにせよ、2020年以降の日本の景気拡大を支えてきたのは「低金利・円安・海外投資」とされる。この資金循環が短期間で逆回転することは紛れもないリスクとなるだろう。

デイリー新潮編集部

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