「あんた、あのとき死んでいればよかったね」と言われて母を殴った…家を追われた僕を救った「スナックのママ」とその娘との恋

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恵理ママの娘・玲香さん

 親とは縁を切りたい、もう誰にも支配されたくない、自分は自分の人生を好きなように生きたい。それが彼の目指すところとなった。「過去にこだわっても過去は変えられないわよ、時間の無駄。これからのことを考えたほうがいい」と言われ、彼は怒りや恨みを封じ込めた。それがいつか爆弾になるかもしれないが、今は抑え込んでおくしかないと判断したのだ。

「それまでは、自分について、自分の将来について考えることを避けていたような気がします。親の言いなりだった延長線上で生きていた。でも恵理さんに会ったことで、別の視点ができた。お坊さんのおじさんと恵理さんは、僕の命の恩人みたいなものですね」

 アルバイトを減らし、奨学金を借りて勉学にも精を出した。理工系の学部だったため、3年生になると急に専門課程が忙しくなっていった。同時期、彼は恵理さんのひとり娘である玲香さんとときどき会う関係になった。玲香さんは、ある小さな劇場の女優で、昼間は母親のスナックでランチや喫茶営業をし、夜は芝居の稽古に励んでいた。

「とはいえ、恵理ママに遠慮があるから、なかなか男女の関係にはなれなかった。でも玲香は、かの恵理ママの娘ですから、母親に輪をかけて懐が深いというか。4歳年上でしたが、結局は彼女に押し切られるような形で関係をもちました」

 玲香さんに溺れた彼は学業に身が入らなくなり、留年までした。それを知った恵理さんは大笑いしたという。

「今のうちに言っておくけど、あなた、結婚なんて考えないほうがいいよ。玲香みたいな自由人は、あなたには向いてない。まあ、玲香も結婚するつもりはないと思うけど」

 恵理さんにそう言われた智紀さんは、「僕自身も結婚には向いてないと思うから大丈夫」と答えたという。

 だが、人間はふとしたことでそれまでの考えを一変させることもある。
 
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 結婚には向いていないと考えていた智紀さんと、自由人の玲香さん。記事後編では、ふたりの関係を一変させた出来事と、智紀さんの心が揺らいでいく過程を紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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