福山雅治、二宮和也、浅野忠信…“絶対的な一瞬”を求めて人生を歩む「写真家の映画・ドキュメンタリー」5選
戦場カメラマンの生と死
〇「地雷を踏んだらサヨウナラ」(1999年)
1973年、カンボジアの戦場で亡くなった実在のカメラマン、一ノ瀬泰造の作品を紹介したい。
25歳の一ノ瀬泰造(浅野忠信)は、戦地を精力的に取材するカメラマンだ。命を懸けた戦場での撮影や、外国人カメラマンが目の前で死んでいく様子などがドキュメント風に描かれる。泰造はカンボジアの12世紀の遺構・アンコール・ワットを撮ることを決意していた。当時カンボジアは、クメール・ルージュ(ポル・ポト派)と政府軍との闘争が激化していた地だ。
1973年4月、姉の結婚式に一時帰国した時が、両親が泰造を見た最後だった。11月、カンボジアのジャングルで、泰造はポル・ポト派の兵士に捕まる。必死の思いで逃走すると、目の前にアンコール・ワットが現れ……。
映画では描かれないが、その後のことを記しておきたい。9年後の1982年、泰造の両親はTBSの番組でカンボジアを訪れる。2人は泰造の生存にわずかな希望を抱いていた。しかし現地の村人から「ここに埋まっている」と案内されると遺骨が発見された。泰造は、ポル・ポト派に捕まってまもなく処刑されたのだ。母は歯並びを見て息子だと確信し、遺骨を近くの川で洗ったという(一ノ瀬信子『泰造 見てますか?』窓社)。
一ノ瀬の3年前には沢田教一がプノンペン近郊で撃たれ亡くなっている。私たちは、彼らがいたからこそ戦場で何が行われたかを知ることができるのだ。2026年8月現在、国際ジャーナリスト連盟(IFJ)は、ガザ地区で267人のジャーナリスト・メディア関係者が死亡したと発表している。
森山大道の現在
〇「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道」(2020年)
今年米寿を迎える森山大道が、80歳の時に撮影されたドキュメンタリー。
作品は、コンパクトカメラを持ちながら、路上で撮影する森山に密着する。スナップショットの名手・森山は、気に入った被写体に出くわすと一瞬のうちに撮る。その姿は、まるで触覚に感知された獲物を捕獲するようだ。新宿ゴールデン街、渋谷道玄坂、コスプレ店員が佇む秋葉原、中野ブロードウェイと様々な街を歩き、そして撮る。
森山のもう一つの代名詞「アレ、ブレ、ボケ」は荒れた粒子、ブレた被写体、ボケたピントの意味だ。振り向きざまこちらを睨みつけるように威嚇する犬の写真がある。代表作「Stray Dog」(1971年)、通称「三沢の犬」だ。森山は当時のことを「写真を解体してみたかった」と語っている。
森山からは、2015年に亡くなった盟友・中平卓馬の名前が頻繁に聞かれる。20代で知り合い、共同事務所を作り切磋琢磨した写真家仲間で「当時、僕には中平しか見えなかった」と語る。中平から貰ったジャック・ケルアックの小説『路上』を読んで、たまらずに旅に出たほど影響を受けたという。
撮影のある日は、中平の命日だった。森山は「On the Road Jack Kerouac」と書かれたTシャツを着て、街に出る。そして中平とかつて一緒に働いた青山の街を歩くのだ。「道路が人生なのだから」というケルアックと森山が重なるようだった。
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