プロ野球が「勝負の9月」に突入! 優勝争いを左右する“打率”でも“防御率”でもない重要すぎる要素 “負けられない試合”を戦い抜くことの意味

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想像以上の「優勝のプレッシャー」

 体の問題以上に選手の負担になるのが、優勝争いの「プレッシャー」です。

 負けられない試合が毎日続く中で、パフォーマンスを維持することがいかに難しいかを99年の優勝争いを取材しながら痛切に感じました。

 一つ一つのプレーが持つ重みが格段に上がるからです。一つのエラー、バント失敗、送球ミス……記録上はシーズンの数字の一つですが、同じエラーやバント失敗でも、負けられない試合では優勝争いに大きく影響します。

 また、ピッチャーが点を取られる、バッターがチャンスで打てないという、野球では当たり前のことも優勝争いの中ではその持つ意味が違ってきます。

 特に優勝マジックが一桁になってからのプレッシャーは相当なもので、1点の重みが一気に高まります。そうした状況下で、自身の持つ力を発揮するには強い精神力が求められます。プレッシャーと闘いながら集中力を高め、最高のパフォーマンスを引き出すことがいかに大変か、優勝後のインタビューでは、どの選手も異口同音に語っていました。

 このような経験を経て優勝を勝ち取った選手たちは、優勝することがいかに大変か、難しいかを身をもって感じ、それを克服した自信と充実感を得るのです。

 これこそが「選手の経験値」です。

 優勝争い、あるいはクライマックスシリーズ進出争いのプレッシャーを経験できていない選手は、実際にそのプレッシャーと向き合うことになった時、どのようにそれを克服するかのすべを知りません。ゼロから自分で学んでいくしかないのです。

 だからこそ「優勝経験者」の存在が重要になります。どう向き合えばいいのかわからない選手に、自分の経験からアドバイスができるからです。チーム内に優勝経験者が多ければ多いほど、チームとしてのプレッシャーとの闘いが有利になります。

 ドラゴンズの場合、1999年の優勝時、88年の優勝経験者は現役ではほとんどいませんでした。大半の選手が手探りでプレッシャーと闘いました。この年は星野監督だったからこそ、そのような選手たちを鼓舞し、チームをまとめて優勝に結びつけたのかもしれません。これについてはまた別の機会に触れたいと思います。

 このような理由から、前年に優勝したチームは「経験値」を生かして翌年のシーズンを戦います。もちろん戦力が揃っているからですが、その戦力を遺憾なく発揮するすべを知っているのです。

別のプレッシャーも

 余談ですが、1999年の優勝時、ドラゴンズの選手たちには、今では考えられない別のプレッシャーがありました。

 当時はまだ、巨人戦が全国ネットでほぼ毎試合生中継されていた時代でした。ニュース番組でも、プロ野球に関しては巨人戦中心で、巨人ファンが全国にあふれていました。この年は巨人との優勝争いだったのですが、現監督の井上一樹選手(55)が優勝後のインタビューで語った言葉が忘れられません。

〈優勝に向けてどれだけ頑張っても、ニュースを見れば「巨人が逆転優勝するには」とか「巨人が勝って中日とのゲーム差を縮めた」とか、巨人ばかりが主語になっている。俺たちは優勝してはいけないのかと思うほど、巨人の優勝をみんなが願っているように感じていた。中日は完全に敵役扱い、それがとても悔しかった。〉

 今のニュースのスポーツコーナーといえば、大谷翔平(32)所属のロサンゼルス・ドジャースが中心で、日本のプロ野球は序列としてかなり下の方になってしまいました。今の選手は当時の井上選手が感じたようなプレッシャーが少ない分、まだマシと言えるかもしれませんね。

村上和宏(むらかみ・かずひろ)
フリーアナウンサー。1967年、広島県出身。専修大学法学部卒業後、91年に東海ラジオ放送入社。制作局アナウンサーとして、主にスポーツ実況を担当。2025年の退社まで、プロ野球をメインに多くの番組制作に携わった。現在、バンテリンドームナゴヤのDAZNドラゴンズ戦実況、「プロ野球ニュース」(フジテレビONE)などに出演中

デイリー新潮編集部

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