倒産26社で過去最多…それでも、生き残る「芸能事務所」とは “一蓮托生”だった「テレビ局」の弱体化は加速
動画配信の事情
芸能事務所は、テレビ局が衰退した分、景気の良い動画配信に軸足を移せばよさそうなものだが、そうもいかない事情がある。NetflixやAmazonプライムなどが制作する番組は月に数本しかない。
ギャラは民放の3倍前後。動画配信のドラマに主演すれば、ギャラが1本(約60分)で1000万円に達することもあるが、制作数が少ない。民放ドラマのように、1人の俳優が続けて作品に出演することもあまりない。
芸能事務所に所属せず、個人事務所を構えたり、フリーで活動したりする芸能人が増えたことも大きい。阿部寛(62)、堺雅人(52)、岡田准一(45)、瀧内公美(36)、満島ひかり(40)らである。個人で仕事を獲得できるだけの実績と知名度を持つ人たちだ。
助演クラスの俳優もフリーが増えた。テレビ局からのギャラが安いことが強く影響している。数万円のギャラから30~40%程度のマネジメント料を差し引かれたら、大きな負担となる。
求められる芸能事務所のあり方が変わりつつある。事業を取り巻く環境が激変したからだ。芸能事務所にとって最大の資産は、テレビ局や映画会社、レコード会社、広告代理店などとの人的ネットワークだった。しかし、これらの組織が持つ力が様変わりしてしまった。テレビが衰退しただけでなく、レコード会社などの力も低下した。
変わる芸能事務所
芸能事務所幹部は「これからの芸能事務所は自立度を高めなくてはならない」と語る。環境の変化の影響を受けにくくするということだ。
「まず所属者のIP(知的財産)を活用した事業を強化しなくてはならない。所属者の海外進出も積極的に後押しすべき」(同)
ほかには事業の多様化や先行投資がものを言う時代になるという。すでにモデルケースはある。北川景子(40)や仲野太賀(33)、横浜流星(29)らを擁するスターダストプロモーションの場合、M!LKを新たにスターダムに押し上げた。
M!LKは短期間で人気を得たわけではない。同社は2010年、まず男性アーティスト集団「EB!DAN(恵比寿学園男子部)」を立ち上げた。この集団内で2014年に結成された5人組の男性ダンスボーカルグループがM!LKである。結成からブレークまで、長い時間をかけて育てた。
同社は俳優の育成にも時間をかける。10歳前後で人材をスカウトすると、以後は無料でレッスンを受けてもらう。たとえば北村匠海(28)は小学校3年生のときにスカウトされた。
戦後最大級のスター・山口百恵さん(67)を輩出したホリプロには、今も綾瀬はるか(41)や石原さとみ(39)、竹内涼真(33)らが所属している。しかし、同社はマネジメントだけを行う会社ではない。
ホリプロは音楽制作や演劇制作などを幅広く手がけている。現在も東京・TBS赤坂ACTシアターで「ハリー・ポッターと呪いの子」を上演中だ。
一方で、所属者のLINEスタンプも販売している。IPの事業化の一環である。さらに映像事業本部がドラマやCMなどの映像コンテンツも制作している。高橋一生(45)が主演したテレビ朝日の春ドラマ「リボーン~最後のヒーロー~」も、テレ朝とホリプロが共同制作した。
前出の芸能事務所幹部は、「個人事務所やフリーでは難しい業務にも対応できるようにならなくてはならない」とも説く。
一例がSNS対策だ。芸能人がSNSで批判されたとき、自分で対処するのは困難である。一方、芸能事務所は、雑誌などが報じる所属者の醜聞の影響を抑えるよう努めてきた。編集部と交渉し、深刻な表現を和らげようとしたりする。
芸能事務所がSNS上でもダメージコントロールを図れば、芸能人たちはその存在をあらためて評価するはずだ。SNSへの対処は芸能事務所にとっても簡単ではないはずだが、ノウハウを研究する価値はある。
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