消費税減税が「弱者をさらに苦しめる」理由 物価がもっと上がって地方自治体が衰退する
財政力の弱い地方ほど打撃を受ける
しかし、物価が下がらない、むしろ上がった、というだけなら、状況が好転しなかったという話で済みますが、減税の場合、それで終わりません。効果がなかっただけでなく、1年で4.4兆円、2年で8.8兆円の税収が失われてしまうことになります。
消費税は先に述べたとおり、社会保障4経費に当てられます。これに関して、とくに地方から悲鳴が上がりつつあるのをご存じでしょうか。現在、社会保障を中心とした行政サービスに支障が生じる恐れがある、という声が各地方から寄せられています。というのは、消費税収の約4割は地方自治体に入る財源だからです。
8月11日付の読売新聞や日本経済新聞には、地方の減収分については国が補填する方向で、政府が検討に入った、という記事が掲載されました。まさに地方自治体から、消費減税で自治体の社会保障財源に穴が開きかねない、という懸念が寄せられ、8月5日には全国知事会や全国市長会が、必要な財源を必ず措置するように国に求める共同声明を出していました。そこで高市政権は、減税を円滑に実施するためにも、地方自治体の懸念を払拭しよう、と考えたようです。
実際、飲食料品の消費税率が1%になれば、地方には大打撃です。国が徴収して地方に配る地方消費税の約1兆円と、消費税収から国が自治体に配分する地方交付税交付金約7000億円を合わせ、年間で約1.6兆円の減収になる見通しだそうです。
だから、「国が補填する」という方向は、地方には望ましいでしょう。でも、そもそも消費減税の財源に、いまなお当てがないのですから、国が補填できる保証などどこにもありません。地方消費税や地方交付税交付金には、地域間の格差を埋めるセイフティネットとしての役割もあります。人口減や産業の衰退で税収が確保できない地域でも、一定の財源を得て行政サービスを続けられるのは、消費税のおかげだといっても過言ではありません。だから、減税の財源が確保できなければ、税収減にあえぐ自治体などは、破綻してもおかしくない状況なのです。
消費減税は国民のための施策なのか
高市総理は6月30日、官邸で「第2回地域未来戦略本部」を開催し、次のように述べました。「高市内閣では、47都道府県どこに住んでいても、安全に生活することができ、必要な医療や福祉、そして質の高い教育を受けることができ、働く場所がある、そういう社会の実現を、目指しております」。
しかし、財源の当てなく消費減税を推し進めれば、まさにご自身がこのように述べたのとは正反対の社会に暮らすことを、国民に強いることにもなりかねません。さらなる物価高を招きかねない消費減税のために、地方が衰退し、行政サービスの質が低下するのだとしたら、日本はなんと馬鹿げた方向に向かおうとしているか、と思わざるをえません。
そもそもは野党に責任があります。先の総選挙で、ほとんどの野党が有権者に媚びるように減税を公約に掲げ、それを見た高市総理が選挙の争点をつぶすために、「悲願」という言葉とともに、2年間限定の飲食料品の消費減税を掲げたのです。
とはいえ、前述のように「検討を加速する」ことを公約したにすぎないのに、ちょうど内閣支持率が下がっていた折、支持率アップをねらって減税を断行しようとしている――。こうして文章にすると、じつにくだらない経緯で、国家の根幹にかかわる決定がなされているかがわかります。消費減税は国民のための施策なのか。こうしてシミュレーションをしてもらえば、おのずと答えは見えてくると思うのです。
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