「4つはないでしょう」死球連発で怒り爆発…プロ野球“最後の乱闘”で起きた異例の退場劇

スポーツ 野球

  • ブックマーク

 2019年8月13日の西武対オリックス戦。メットライフドームで、両軍ナインが入り乱れる大乱闘が起きた。きっかけは、オリックス・若月健矢への死球だった。ところが、この一件は単発の死球に怒りが爆発したわけではない。オリックスは、この年の西武戦で突出して多くの死球を受けており、両軍の間にはそれ以前から不穏な空気が漂っていた。【久保田龍雄/ライター】

乱闘劇のゴングが

 2000年代以降のプロ野球で起きた印象的な乱闘劇を振り返る企画。最終回は、佐竹学コーチ、田嶋大樹、平良海馬が別々のプレーで退場する異例の展開となった、西武とオリックスの一戦を取り上げる。

 これまでに起きた乱闘劇の多くは、死球や危険球がきっかけだった。

 2017年4月4日の阪神対ヤクルト戦で起きた阪神・矢野耀大コーチの飛び膝蹴りに代表される最後の“格闘技系乱闘”も、5回にヤクルト・畠山和洋が死球を受けたことが引き金となった。

 今回紹介する西武とオリックスの最後の本格的な乱闘も、ご多分に漏れず死球が発端だった。ただ、そこに至るまでには、同一カードで何度も繰り返された死球の連鎖が伏線となっていた。

「仏の顔も3度」とよく言われるが、この年のオリックスは3度どころか、10数回も忍耐に忍耐を重ねていた。

 乱闘が勃発した8月13日の対戦前までの18試合で、オリックスの打者が西武投手陣から受けた死球は、実に14個に上る。

 球団別に見ると、楽天とロッテが各7、ソフトバンクが6、日本ハムと交流戦のセ・リーグ6球団が各5。いかに西武戦での死球が突出していたかがわかるだろう。

 直近の試合でも、7月19日から21日までの同一カード3連戦で計5死球を受けており、「よくぞここまで我慢した」と思えるほど当てられまくっていた。

 そして、お盆3連戦の初戦となった8月13日、1対5とリードされたオリックスの4回表の攻撃中に乱闘劇のゴングが鳴る。

体が接触して正直怖かった

 この回、オリックスは2死無走者から中川圭太、西野真弘の連打のあと、安達了一が四球を選び、2死満塁と反撃のチャンスを広げた。

 ところが、次打者・若月健矢が西武の2番手・森脇亮介から左肘に死球を受けたことから、ついに溜まりに溜まっていた怒りが爆発する。

 実は、この日のオリックスは、初回に先頭打者・福田周平、3回2死無走者では後藤駿太が、いずれも西武の先発・齊藤大将から死球を受けており、若月で3人目。加えて開幕以来17個目の死球とあっては、「もはや我慢も限界!」とぶち切れるのも無理はない。

 若月がマウンドに向かうと、佐竹学一塁コーチも鬼の形相で突進し、森脇の胸を両手で思いきり突いた。

「どついたのは申し訳ない。あれだけ当てられている中で、選手を守らないと。ケガをされたら困るので」(佐竹コーチ)

 これを合図に、両軍ナイン入り乱れての乱闘劇が幕を開ける。

 怒号や罵声が飛び交うなか、佐竹コーチを止めようとした西武・小野和義投手コーチのメガネが割れ、指を踏まれた。初回に左越え19号3ランを放った外崎修汰も「ああいう本格的なのは初めて。体が接触して正直怖かった」と回想するほどだった。

 騒ぎが収まると、最初に手を出した佐竹コーチが暴力行為で退場処分となり、責任審判の本田英志二塁塁審が警告試合を宣告して試合が再開された。

 だが、その余韻も覚めやらぬ4回裏、今度はオリックスの先発・田嶋大樹が森友哉の右肘付近にぶつけてしまう。

「あれは報復死球ではないです。内角を攻めた結果。勝負の世界なので、いくところはいかないと。当たってしまったことは申し訳ない」

次ページ:時間差退場

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。