「4つはないでしょう」死球連発で怒り爆発…プロ野球“最後の乱闘”で起きた異例の退場劇

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時間差退場

 田嶋は報復死球を否定した。

 しかし、本田責任審判は「(警告試合宣告後の)死球で自動的ということではない。あのときにそういう(故意的な)ものを感じた」と判断し、田嶋を退場処分にしたことを明かした。

 さらに9回のオリックスの攻撃中、2死満塁で西武の5番手・平良海馬が福田に死球を与えると、これも報復と見なされ、退場者はNPBワーストタイの計3人となった。

 1試合での3人退場は、2007年7月のロッテ対オリックス戦で、オリックス・ローズと2人のコーチが退場になって以来通算6度目だが、過去はいずれもひとつのプレーをきっかけに複数人が退場したケースだった。

 佐竹コーチ、田嶋、平良と、3人がそれぞれ別々のプレーで“時間差退場”になったのは史上初の珍事だった。

 平良の退場時には、オリックス・西村徳文監督が「(1試合で)4つはないでしょう」と西武・辻発彦監督にクレームをつけるひと幕もあった。

 辻監督も「後味が悪い。4つも当てて、プロとして恥ずかしいし、申し訳ない。かと言って、明日からそこ(内角)に投げられないようでは抑えられない。投手陣には強く言っておくよ」と事態の重さを受け止めた。

 翌14日の試合前、両監督は友寄正人審判部長とともに約20分間話し合いを行った。

 西村監督は「あれだけの死球があって申し訳ないと言っていただいた。こちらとしては事を大きくすることはないです」と納得し、辻監督も「ファンが見ている中で、お互いにこんなことは嫌だと」とコメント。両軍は“手打ち”となった。

乱闘が見られなくなった背景

 そして、この騒動を最後に、本格的な乱闘は見られなくなった。

 翌2020年には新型コロナウイルスの感染拡大によって球場内での大声などが規制され、それもひとつのきっかけとなった。その後は死球などを原因に一触即発の事態が起きても、両軍ナインがにらみ合う程度で収束するパターンがほぼお約束となっている。

 乱闘が見られなくなった背景には、当事者への処分が重くなったことや、テレビ、ネット中継で細かな行動まで映し出され、選手や球団のイメージに大きく影響するデメリットが考慮されるようになったこともあるだろう。

 また、侍ジャパンに選ばれたトップクラスの選手が他球団の選手とチームメイトになり、合同自主トレを行うなど、球団の垣根を越えた交流が増えたことも理由のひとつに挙げられる。

 かつてはプロ野球の風物詩のように繰り返されていた乱闘も、今ではすっかり過去の光景になった。結果として、両軍ナインが入り乱れ、実際に手が出て退場者まで出た2019年8月13日の西武対オリックス戦が、現在まで「最後の本格的な乱闘」となっている。

 果たして、このままプロ野球から乱闘は姿を消すのか。それとも、いつの日か再び両軍ベンチが一斉に飛び出す日がやって来るのか。「最後の乱闘」の続きは、まだ誰にもわからない。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘! 激突! 東都大学野球』(ビジネス社)

デイリー新潮編集部

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