甲子園で見えた「135キロ右腕」の異質さ 神村学園・龍頭汰樹が“公立進学校の雄”東筑打線を翻弄した理由
最速135キロ。それでも、福岡大会を勝ち抜いた東筑の打者たちは、次々と差し込まれた。県内有数の進学校として知られるチームが、最後まで小柄な右腕を捉え切れなかった。【西尾典文/野球ライター】
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なぜ打たれない「小柄な右腕」
8月6日、甲子園球場で行われた神村学園(鹿児島)-東筑(福岡)。神村学園が5対1で勝利した一戦をバックネット裏から見ていて、最も強く印象に残ったのが、5回途中から登板した神村学園のエース・龍頭汰樹だった。
身長170センチ、体重63キロ。ストレートの球速も目立つ数字ではない。それなのに打者はタイミングを外され、ボールを捉え切れない。小柄な右腕は、なぜここまで打たれないのか。試合後、本人や捕手、視察していたスカウトの言葉から、その理由を探った。
龍頭は福岡県久留米市出身。久留米市立明星中から神村学園へ進学し、現在は3年生である。
その名が全国に知れ渡ったのは、今春の選抜高校野球だった。初戦で高校ナンバーワン投手との呼び声が高い織田翔希(横浜)と投げ合い、6安打完封で勝利した。続く智弁学園戦では、チームこそ延長タイブレークの末に1対2で敗れたが、10回を一人で投げ抜き、自責点1で完投した。
ストレートの平均球速は130キロ台中盤。速球で打者を押し切るタイプではない。こうした投手は、打者の仕上がりが十分ではない春先には好投しても、夏になると対応されることが多いとされる。
龍頭はその見方を覆した。夏の鹿児島大会では4試合、21回2/3を投げて無失点。春の好投を一過性のものにせず、チームを春夏連続の甲子園出場へ導いた。
二番手としてマウンドに。「悔しかったんですけど…」
東筑戦でも安定感は変わらなかった。2点をリードした5回、1死一、二塁の場面から二番手としてマウンドに上がると、空振り三振と右翼フライでピンチを切り抜けた。その後の4イニングは被安打2、四死球0で無失点。東筑に流れを渡さず、5対1の勝利につなげた。
試合後、龍頭はこの日の登板を振り返った。
「先発の松永遥斗(2年)が頑張って粘り強く投げてくれたので、その思いを背負ってしっかり0点に抑え、もう一度チームにいい流れを持ってくるという気持ちでマウンドに上がりました」
エースでありながら、先発を外れた。登板前には強い悔しさもあった。
「最初はめちゃくちゃ悔しかったんですけど、チームメートから『後半勝負だから、しっかり準備しておけ』と言われて、気持ちを切り替えることができました」
無失点に抑えても、本人は内容に満足していなかった。
「ストレートとカットボールは良かったんですけど、落ちる系のボールが少し抜け気味だったので、次の登板までにそこを修正していきたいと思います」
最速135キロだったことについて尋ねても、答えは明確だった。
「球速に目を向けるのではなく、しっかりコントロール良く投げて、打たせて取るのが自分の持ち味なので、それを生かしていきたいです」
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