甲子園で見えた「135キロ右腕」の異質さ 神村学園・龍頭汰樹が“公立進学校の雄”東筑打線を翻弄した理由

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「すごく器用なピッチャー」

 制球は確かに高いレベルにある。東筑戦では四死球を一つも与えず、厳しい場面から登板してもストライクゾーンで勝負できていた。ただし、選抜から夏の甲子園初戦までほとんど失点せずに抑え続けた理由を、制球力だけで説明するのは難しい。

 バッテリーを組んだ川本羚豪(2年)は、まずストレートの質を挙げた。

「コントロールが良いというのが、まず一番です。ストレートもスピードガンの数字以上に手元でボールが来ているので、打者は打ちづらいのかなと思います」

 続いて口にしたのが、龍頭の器用さだ。

「すごく器用なピッチャーで、自分から伝えることはないのですが、同じ球種でもいろいろ投げ分けているようです。あとは強気が持ち味なので、スピードがないからといって弱気になるのではなく、自分も強気のリードを心がけています」

 東筑戦で対戦した打者16人のうち、ストレートが結果球となったのは6度。その中で安打は1本も許していない。球速表示は130キロ台中盤でも、打者の手元では速く感じられる。川本の説明は、実際の打者の反応とも一致していた。

スカウトの目にはどう映った?

 スタンドから見ていて気になったのは、単に差し込まれているわけではない点だ。打者は打てそうに見えてタイミングを外され、狙いを絞り切れないまま凡打を重ねていた。

 その理由を、この試合を視察していたスカウトに尋ねると、「ギャップ」との答えが返ってきた。

「打者の目線から言うと、いろいろな部分でギャップがあるのが大きいと思いますね。体も小さくて、そこまで速いボールには見えないけど、打席に入ると意外に速く感じるというのもその一つです」

 さらに、対応の難しさをこう説明する。

「打てそうなのに打てない、なぜ打てないのか分からないというピッチャーの方が対応は難しい。おそらく投球の間合いを変えたり、同じ球種でも微妙に変化をつけたりしているのでしょう。このあたりは教えられて簡単にできるものではありません。よく考えて投げているのだと思いますね」

 見た目と実際の球速感の違い。同じ球種の中で生まれる微妙な変化。打者の反応を見ながら変える間合い。そして、ストライクゾーンで勝負できる制球力。龍頭が打たれない理由は、特定の決め球ではなく、複数の要素を組み合わせる投球術にあるのだろう。

 これで今年の公式戦は、選抜を含めて45回1/3を投げ、自責点はわずか1。防御率は0.20となった。ここまでの成績について神村学園の小田大介監督に尋ねると、「出来過ぎです」と笑った。春から夏にかけてこれだけ安定した数字を残した以上、偶然で片づけることはできない。

 東筑戦では、落ちる球が抜け気味だったと龍頭自身が課題として挙げた。勝ち上がるほど相手打線の対応力は高くなる。次戦では、その修正も問われるだろう。

 球速表示だけを見れば、決して目立つ投手ではない。実際の打者は差し込まれ、狙いを外され、凡打を重ねていく。数字では捉え切れない投球術を備えた「小さな大エース」が、甲子園でどこまで勝ち進むのか。今後のマウンドが楽しみだ。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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