「甲子園に出なくてもいい」と言われる日も? 猛暑と資金難に苦しむ出場校の“切実な声”

スポーツ 野球

  • ブックマーク

「OBからの寄付金だけでは…」

 暑さへの対応だけでも、現場は多くの労力を求められる。甲子園出場校を悩ませる問題は、選手の体調管理だけではない。

 学校が背負う経済的な負担も、近年深刻さを増している。

 出場校には、ベンチ入りする選手20人と監督、責任教師の計22人に対し、日本高野連から1日1人あたり1万円の宿泊補助費が支給される。だが、控え部員や応援に参加する一般生徒の費用は、学校側の負担となる。

 遠方から出場する学校ほど交通費はかさみ、勝ち進めば宿泊日数も増える。ある高校の野球部長は、負担の大きさをこう話してくれた。

「甲子園出場が決まるとOBから寄付金を募るのが通例となっていますが、それだけではなかなか苦しいのが現状です。じゃあ応援をそんなに出さなければいいじゃないかとも言われますが、アルプス席がガラガラということになれば、学校のブランド的にも良くありません。そのうち、学校側から『こんなにお金がかかるのであれば、甲子園に出なくても良い』と言われないか不安ですね……」

 ここ数年は、OBからの寄付に加え、クラウドファンディングを通じて一般から広く支援を募る高校も見られる。新たな形で資金を集めなければならない現状からも、甲子園出場校の厳しい懐事情がうかがえる。

 将来的には、資金難を理由に出場を辞退せざるを得ない高校が現れる可能性も否定できない。

持続可能な大会にするために

 課題が山積する一方で、高校野球界では7イニング制の導入が大きな論点となっている。日本高野連の検討会議では、2028年春から全公式戦に導入することが望ましいとの結論が示された。

 もちろん、試合時間の短縮が選手の負担軽減につながる面はあるだろう。だが、現場の声を聞くと、7イニング制だけで解決できる問題ではないことが分かる。

 猛暑の中でプレーする選手への対策、二部制の日程、捕手を含めた選手の健康管理、出場校への経済的支援。甲子園が抱える課題は、試合のイニング数だけにとどまらない。

 開会式では、八王子実践の矢沢陵磨主将(3年)が、次のように選手宣誓を行った。

「今、野球ができることは決して当たり前ではありません。だからこそ、高校球児はいい顔をして野球をしよう。(中略) いい顔で日々を過ごすことは、自分自身を励まし、周りの方々に感動や希望を与えます」

 球児たちに「いい顔」でプレーすることを求めるのであれば、その前提となる環境を整える責任は大会を運営する側にある。暑さ対策も、出場校への経済的支援も、7イニング制の議論だけでは解決しない。甲子園を持続可能な大会にするため、現場の声を踏まえた抜本的な見直しが求められている。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。