レッドソックス「吉田正尚」復活を支えた“焦らず腐らず”…トレードについて問われて「それも野球の一部ですね」と返す余裕

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打撃練習に変化が

 その後、傘下3Aのウスター・レッドソックスを指揮していたチャド・トレーシー氏(46)が暫定監督としてチームをまとめることになった。

「トレーシー暫定監督は22年から3Aウスターを指揮していたので、若手選手や故障による調整でマイナー降格した選手たちを知っています。若手中心の采配や控え選手の抜てきも予想されましたが、そうではありませんでした」(前出・同)

 不振に喘ぐ選手たちを辛抱強く使い、本来の調子を取り戻させたという。

 つまり、シーズン序盤での監督交代後も、吉田はチャンスを貰えなかった。しかし、吉田は腐らなかった。むしろ、WBC大会明けから取り組んできた新打撃フォームの習得に没頭した。

「スプリングキャンプ中から『Masaの打撃練習のやり方が変わった』との情報が出ていました」(米国人ライター)

 通常、メジャーリーグの打撃練習ではスイング量を多くしようとする。ペナントレースが始まってからがとくにそうで、打者たちはスイングをしたら、「早く次のボールを投げてくれ」と言わんばかりにすぐに構える。吉田は違った。スイングをしたら、その打球の行方を追い、バットを構える位置を少し変えるなどし、実戦のようにしっかりと構えてから次のボールを要求していた。

 この練習の意図は、強く、飛距離のある打球を打つこと。のちにチャンスを掴んだときに地元メディアに語っていたのだが、「メジャーリーグでは強い打球を打てなければ生き残れない」と思ったそうだ。

「そもそも、レッドソックスが『5年総額9000万ドル(約123億円)』もの大型契約でMasaを迎えたのは、出塁率の高い1番打者を探していたからです。22年、オリックスで過ごした彼の出塁率は4割4分7厘と高く、Masaを獲得すれば、19年シーズンのような打線が組めるとも考えていました」(前出・同)

 レッドソックスは打撃のチームでもある。1番バッターに出塁率の高いバッターを置き、2番から5番までを長打力のある打者で固め、得点を積み上げていくスタイルで、19年までその重要な1番を務めていたのが、現ドジャースのムーキー・ベッツ(33)だった。そのベッツの退団後、レッドソックスには4割強の出塁率を誇る打者が見当たらず、吉田に期待した。しかし、吉田と言えば豪快なフルスイングが魅力で、日本のファンもそのイメージが強くあったはずだ。移籍後の吉田はチームの期待に応えるため、広角に打つことも試みたのだが、

「ボール球に手を出してしまい、凡打になるケースも増えました」(前出・同)

 吉田は広角に打つのを止め、強く、飛距離のある打球が打てるスイングを取り戻そうと試行錯誤を続けていた。それが、打撃投手役が放る投球の間を置く練習だった。すぐに結果は出なかったが、トレイシー暫定監督やチームメイトが評価を改めたのは、試合中での姿勢だった。

 ベンチスタートとなる日が続いた。吉田は試合後半に入ると、無言でバッティンググローブをはめる。試合展開を見て素振りも始める。誰に指示されたわけでもなかった。そのまま出番ナシで終わる日もあった。それでも、出場準備は続けた。その姿勢がトレイシー暫定監督の気持ちも動かしたのだという。

「レッドソックスが破竹の12連勝でワイルドカード争いに復活した際、Masaがスタメン起用されました。スタメンで出られなかった試合もありましたが、同僚たちも彼の代打準備の話をしていました。彼の姿勢と努力は低迷するチームに響くものがあったのでしょう」(前出・現地記者)

それも野球の一部

 オールスターゲーム・ブレイク中、チームはタイガースから外野手兼DHのジャーマイ・ジョーンズ(28)を獲得したことを発表した。吉田と役どころが完全に被る。吉田は左投手との対戦成績が良くないため、相手投手に応じて、右打ちのジョーンズと併用して使っていくようだ。トレイシー暫定監督も冷静にチームを分析しての補強である。しかし、吉田にとってはまた試練の始まりともなった。

 ある米メディアが吉田に「自身もトレード要員になっているようだが?」とマイクを向けたことがあった。吉田は淡々と、こう答えた。

「それも野球の一部ですね」

 交換トレードがまとまらないのは、やはり高額年俸がネックとなっているようだが、這い上がってきた吉田を支持するボストンのファンは多い。後半戦のレッドソックスのDH争いが熱くなりそうだ。

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