「郵便局は約2万4000局で横ばい、小学校は約1万9000校まで減少」――650億円の公金投入で郵便局を支える意味はあるのか

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 郵便局のネットワークを維持するため、来年度から年間約650億円の公金を投入し、日本郵政にゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の株式3分の1超えを保有し続けることを義務づける郵政民営化の改正法が成立した。政府は「地方を支える最後の砦」と説明するが、それは本当に税金を投じる理由になるのか。人口減少が進む日本で小学校よりも多い郵便局を維持し続けることなどについて、長年郵政民営化の問題を取材してきたジャーナリストの磯山友幸氏に話を聞いた。

(2026年7月27日に「新潮QUE」で配信した記事をもとに再構成しました)

郵政民営化の趣旨から逸脱――「公金投入」「株式保有義務化」の問題点

 改正郵政民営化関連法が6月19日、参議院の本会議で可決され成立しました。今回の郵便局をめぐる法改正で注目のポイントは大きく二つです。一つ目は政府が日本郵便に対して来年度から年間約650億円の公金を投入すること、そして日本郵政がゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の株式の3分の1超えを当分の間保有するように義務付けることです。

 まず一点目の公金の投入について、これは本当にとんでもないことです。民間企業として運営されている日本郵便に公金を入れることは、民営化の理念とかけ離れています。今回の法改正はいわゆる「再国営化」するということ。それは国民にとって郵便局が必要不可欠なものであると国が考えているということを意味しますが、果たして国民は郵便局ネットワークの維持を求めているのでしょうか。郵便局を日常的に利用するという人は多くないでしょう。自治体の機能を代替するなどの話もありますが、実際に自治体関係者に聞くと「郵便局にお願いするような仕事はありません」と言います。地方の方からは「郵便局よりもコンビニエンスストアがほしい」という声を耳にします。

 当初は民営化されたゆうちょ銀行やかんぽ生命からの資金を日本郵便の赤字の補填に充てていましたが、そうした財源だけでは維持できなくなり、ついに公金を注入するという話になりました。10年くらい前から、再度国営化しないと郵便局がもたないというのは、自民党のある幹部も言い続けていました。彼らがそういう方向を狙っているとは分かっていましたが、ここまで露骨に税金を投入し、なおかつメディアでもほとんど取り上げないままに法案が成立することになるとは思いませんでした。国会で自民党が圧倒的多数を握っているから成立したものの、本来そこまで簡単に通るような法案ではありません。

 二点目の日本郵政がゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式の3分の1超えを当分の間保有するように義務付けられたことについて、元々は郵便局が持っていた金融2社を民営化し、イコールフッティング(商品・サービスの提供において、双方が対等の立場で競争が行えるように条件などを同一化すること)にしないと民業圧迫になるという話でした。にもかかわらず、日本郵政が株を持ち続けるのは、こちらも民営化の理念に照らせば問題です。株を持ち続けることで、そこから得た利益を自らの郵便局ネットワークに使いたいのでしょう。郵政民営化の趣旨からは完全に逸脱しています。

郵便局の数は約2万4000局で横ばいが続く、一方で小学校の数は減少を続ける

 世界では郵便事業の民営化や効率化が進んでいます。スウェーデンとデンマークが共有する政府系郵便会社「ポストノルド」は、インターネットの普及による郵便物の減少を受け、デンマーク国内での郵便物の配送そのものを辞めている時代です。そうした情勢の中で、郵便局を残すために毎年650億円の税金を使うというのは、国際的に見ても釈然としないです。

 全国の郵便局の数は約2万4000局で横ばいが続いていますが、その一方で小学校の数は減少を続け約1万9000校になっています。郵便事業よりも子どもの教育のほうが大事だと考える人は多いと思います。少子化で小学校が減っていく中で、郵便物が減少しているにも拘わらず郵便局が減らないというのは疑問です。郵便局の数だけが維持されているのは、財政面でも非常に問題がある。さらに言えば、点呼問題や顧客情報の不正利用など日本郵政では不祥事が相次いでいる中で、罰金を取るのは分かりますが、郵便局のネットワークを維持するために国が補助金を出すというのは多くの国民が疑問に思うのではないでしょうか。

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「新潮QUE」にて公開中の関連記事【「小学校より多い郵便局を優遇するな」――650億円の公金投入でもサービス低下「日本郵政」再国営化で踏む轍】では、背景にある「全国郵便局長会」と「自民党」の関係などについてより詳しく報じている。

デイリー新潮編集部

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