高卒3年目で無敗の快進撃、ドラ5右腕は158キロ…球界を驚かせた3投手が覚醒した理由
早い段階で先発に転向する計画も
前田よりさらに若く、高卒2年目で早くもチームに欠かせない戦力となっているのが篠原響(西武)だ。昨年はルーキーながら二軍でチームトップタイとなる8勝をマーク。シーズン終盤には一軍のマウンドも経験した。今年は開幕一軍入りを果たすと、勝ちパターンの中継ぎに定着。ここまで31試合に登板してチームトップとなる23ホールドをマークしているのだ。5月9日の楽天戦では自己最速となる158キロをマークするなどスピードは既に一軍でもトップクラスであり、また制球力の高さも大きな武器だ。
そんな篠原は、前田のように高校時代から輝かしい実績を残していたわけではない。福井工大福井では甲子園出場もなく、3年夏も福井大会の準々決勝で敗れ、ドラフト5位での入団だった。高校時代の実績やドラフト順位を考えると、これほど短期間で一軍の戦力になると予想していた関係者は多くなかったようだ。
「高校の時から体の使い方が上手く、調子が良い時は140キロ台後半のボールを投げていました。ただまだまだ細く、スタミナや変化球も物足りない。大学に行って評価を上げた方が良いと考えていたスカウトも多かったと思います。ただ、後から聞いた話ですが西武は夏の大会が終わった後も熱心にチェックして、そこでの成長ぶりを評価して指名を決めたそうです。大学に入って急に伸びる選手もいますが、篠原はそれがさらに早かったということでしょう」(他球団の北信越地区担当スカウト)
今年はここまで中継ぎとして起用されているが、オリックス時代の山本由伸(ドジャース)のように、早い段階で先発に転向する計画もあるという。高橋光成、平良海馬はメジャー志向が強い。将来の先発陣を担う投手として、球団が篠原に寄せる期待は高い。
真価が問われるのはむしろここから
前田と篠原が早い段階で頭角を現したのに対し、山野太一(ヤクルト)は遠回りを経て現在の地位をつかんだ。
高川学園から東北福祉大を経て、2020年のドラフト2位で入団。即戦力と期待されたが、故障に苦しみ、2年目のオフには育成契約へ移行した。その後も思うように登板機会を増やせなかったものの、昨年後半に5勝を挙げて流れを変えた。
今季は開幕から先発ローテーションを守り、序盤に4連勝。チーム最多の8勝を挙げ、投手陣の中心を担っている。成績を一気に伸ばした要因について、他球団のアナリストは次のように分析する。
「ストレートの球速も上がっていますが、それ以上に大きいのが打ちとるパターンを確立できたことではないでしょうか。スピードがあって小さく変化するワンシームはカウントをとるのとゴロを打たせるボール。スライダーとフォークは少し変化が大きく、空振りを狙う。それぞれのボールの意図が明確になったように見えます。自分の持ち味、持ち球の特徴をしっかり整理できていますし、色んなパターンで勝負できる。相手からすると、狙い球を絞りづらく、対策が難しいタイプのピッチャーだと思います」
6月以降の勝利は1勝にとどまる。それでも、先発した全試合で5回以上を投げ切っており、試合を大きく崩してはいない。
ヤクルトは7月に入って急失速した。Aクラス争いに踏みとどまるには、山野がローテーションを守り、安定した投球を続けることが欠かせない。
前田、篠原、山野は、入団時の評価から現在の立場に至るまで三者三様である。前田は直球の質を高め、篠原は想定を上回る速度で成長し、山野は故障や育成契約を乗り越えて自らの投球スタイルを確立した。
現在の成績だけを見れば、突然現れた新星のように映るかもしれない。しかし、その背景には、それぞれが課題と向き合い続けた時間がある。今季限りの活躍に終わるのか、各球団の投手陣を背負う存在へ進むのか。3人の真価が問われるのは、むしろここからである。





