14歳年上の人妻教師に恋した中学生 「男として認められた」8年かけて思いを告げるまで
ひとりの男として認めてくれた?
講義が終わったあと、彼は麻由美さんに近づいた。どうしてと言ったら、「実は中学を辞めたの。私はもともと高校の教員免許ももっていたから、本当は高校の教師になりたかった。出産したこともあって、時間的に融通のきく予備校がいいかなと」と彼の目をじっと見た。
「昔より彼女の目は雄弁になっているような気がしました。僕のことを嫌ってはいない。それだけは確信できた」
勉強に向き合う態度が変わったのはいうまでもない。そこから必死に学習を重ね、彼は難関大学の数学科に合格した。麻由美さんも満面の笑みで祝福してくれた。
「お祝いしようと言ってくれて、ふたりで食事に行ったんです。ランチですけどね。ちょっと静かな高級店でした。先生の顔を見ているだけで幸せだった。大学生活、楽しんでねと言われたとき、『これからもときどきお茶してくれませんか』と言ったんです。先生は『予備校の空き時間ならいいわよ』って。先生もひとりの男として、僕のことを認めてくれている。そんな気がしました」
19歳と33歳である。彼女が彼を「ひとりの男として」認めていたかどうかは定かではないが、努力を重ねた教え子を誇りに思ったのは確かだろう。
彼女の顔が曇りがちで…
数ヶ月に1度という頻度ではあったが、彼は彼女の迷惑にならないようにときどき会えればそれでよかった。「わきまえる」のが大人の男だと信じていた。
就職先は、とあるシンクタンクに決まった。「好きな道」とは言い切れなかったが、「得意な道」ではあった。麻由美さんは「すごいじゃない」と手放しで喜んでくれた。だが言葉とは裏腹に、彼女の顔がどこか曇りがちなのが気になった。
「私生活を根掘り葉掘り聞いたことはなかったんですが、そのときは妙に気になって……。すると『ちょっとね、家族の問題で』と言葉を濁した。夫とうまくいっていないんだと直感でわかりました。『就職したら、一緒に暮らしませんか』と僕は単刀直入に言いました。飛躍しすぎていますけど、僕としては自然な流れだった。彼女は『私は結婚してるのよ』と力なく言った。『間違った結婚なら解消したほうがいいと思う』と前のめりになったら、彼女はフッと笑って『何も知らない立場で、そんなこと言わないの』と急にお茶目な言い方をして。そういう言い方をするときの彼女は弱っているんだと思った」
長年、彼女をじっくり観察してきた自分の目に狂いはないはずだと彼は思ったという。彼女への愛は、熟成していたのだ。
「心からの敬意を込めながら、『先生、いや、麻由美さん。僕はずっとあなたが好きだった。あなたのすべてを一緒に背負います。だからひとりで苦しまないで』と言ったんです。そうしたら彼女、泣き出してしまって」
彼の心が伝わったのだろう。麻由美さんの「年上の女性」「先生」としての緊張が一気に崩れた瞬間だった。そこからふたりの関係は変わっていく。
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中学時代から抱き続けてきた思いを、ようやく麻由美さんに伝えた琢己さん。記事後編では、二人が選んだ道と、それによって周囲に残した傷を紹介している。
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