「中国に負けて日本は“第二の敗戦”を迎える」 邦人2名を拘束 「今回の“人質外交”は、経済的圧力から明らかにギアを上げている」
「5年以上の懲役が科される場合も」
またもや中国で邦人が拘束された。背後では日本の経済安全保障に欠かせないレアアースが絡んでいる。希少鉱物の世界最大の輸出国・中国は、あらゆる手段でわが国への圧力を強めているが、対抗策を担うべき「高市官邸」は専門家の警告を無視していたのだ。
(2026年7月14日に「新潮QUE」で配信した記事をもとに再構成しました)
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7月1日、毎日新聞と共同通信は、6月に中国当局が、東京に本社を置く大手重電・富士電機グループの社員2名を逮捕したと報じた。
この2名は、先月24日に木原稔官房長官が定例会見で「国家輸出入禁止貨物密輸罪」の容疑で拘束された事実を認めており、その処遇が注目されていた。
外報部デスクが言う。
「現地メディアによると、今回逮捕された2名のうち一人は富士電機グループの現地駐在員、もう一人は出張中だった同社社員だとされています。それぞれ大連から規制対象となるレアアース磁石を日本へ持ち出そうとしたことが、現地の税関によって露見して5月に拘束されたようです」
今後は起訴するか否かの判断まで最長7カ月かかり、裁判が始まれば判決が下るまで2~3年の時間を要する見通し。長期間の拘束は避けられそうにない。
「今回の容疑で有罪となれば、5年以下の懲役が言い渡されます。密輸しようとしたレアアース磁石が仮に軍民両用品、いわゆるデュアルユース品に該当する上に多量だったとすれば、5年以上の懲役が科される場合もあります」(同)
「今年に入ってから何度も専門家らが警告を」
「すでに高市首相率いる官邸に対しては、今年に入ってから何度も専門家らが警告を発していました」
と明かすのは、さる政府関係者だ。
「米中関係の悪化を受けて、昨年4月から中国当局はレアアースの輸出規制を強化していました。中でも高性能磁石の材料である重希土の対日輸出が全面ストップとなり、対策を取らないと大変なことになるとの指摘は、邦人拘束以前から官邸にもたらされていました」
にもかかわらず、高市首相が陣頭に立ち、レアアース問題を所管する赤澤亮正経産相、経済安保を担当する小野田紀美内閣府特命相が対策に乗り出した様子はない。
「第二の敗戦」
キヤノングローバル戦略研究所上席研究員で中国研究センター長を務める峯村健司氏に聞くと、
「少なくとも1月時点で日本政府が何らかの対策を示していれば、ここまで事態は悪化しなかったかもしれません。あまりに危機感が欠けているのは、本気で経済戦争を仕掛けてきた中国政府の意図を読めていないことの証しです。今回の“人質外交”は、これまでの経済的圧力から明らかにギアを上げてきています。1人目の邦人が拘束された5月18日は、北京で開催された米中首脳会談が終わり、トランプ大統領が帰国の途についた3日後でした。会談でトランプ氏は台湾への武器売却が中国との『交渉カード』となると語り、中国に歩み寄るような姿勢を見せた。これを米国による『譲歩』とみた中国は、同盟国である日本に対してより強い態度に出たのです」
官民共に、日本がターゲットになっているという危機意識に乏しいとして、峯村氏はこう続ける。
「最大の問題は、せっかく国家情報局が創設されても対中インテリジェンスに詳しい専門人材がいなければ機能しない、という点です。官民を挙げてインテリジェンス機能を強化しなければ、日本は“第二の敗戦”を迎えるのではないかと危惧しています。私は年間100社くらいの企業に向けて講演をしていますが、拘束などのリスクについて9割以上の企業が何ら対策を講じていません」
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