スタバのアイスコーヒー“1200円”…ロンドンで実感した「円の購買力はかつての3分の1」高市政権が物価高対策するほど円が弱くなっている

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政権が利上げを嫌がるから円安が進む

 円安の大きな原因のひとつに海外との金利差がある。もともとポスト・コロナのインフレ対策に欧米諸国が金利を大きく上げた際、日本は異次元緩和にこだわって金利を据え置いた。このため日米、日欧の金利差が開き、円安が大きく進んだ経緯がある。円を持っていても金利がつかず儲からないから、売られてしまうのである。

 だが、2024年3月、日本銀行は10年以上続いた異次元緩和をやめ、以後は金利がある世界を志向している。この6月にも日銀は政策金利を1.0%程度に上げた。それでもアメリカの3.5~3.75%、ユーロ圏の2.4%よりはだいぶ低い。だから、この金利差を縮める努力をする必要があるはずだが、高市政権にはその気がない。

 高市政権は金利を上げるどころか、日銀が政策金利を上げるのを牽制してきた。6月の利上げはアメリカのベッセント財務長官からの横やりもあって、やむなく承知したが、基本的には利上げに否定的だ。6月30日に政府が示した「経済財政運営と改革の基本方針」の原案に、「強い経済の実現に向け、適切な金融政策が非常に重要」という一文を加わったことからも、そう見られている。

 企業がお金を借りやすいように低金利の維持が必要だ、という理屈のようだが、市場はこれを高市政権の日銀への介入と受け取る。つまり、政権は日銀に利上げさせたくない、と市場は判断し、今後の利上げへの期待が持てないから円売りが加速する。結局、緩和政策を維持したいという政権の思惑が市場に見透かされているから、6月のように日銀が利上げに踏み切ったときも円高に振れない。

 要するに、高市政権はあからさまに日銀を牽制することで、円安が進む環境を積極的につくっていることになる。物価が上がり続ける状況へと率先して導いている、と言い換えることもできる。

 加えて「責任ある積極財政」の影響がある。高市総理がそれを口にすればするほど円は下落する。そのたびに日本の財政への信認度が低下するからである。たとえば、先の補正予算では一般会計の総額が18.3兆円で、6割を赤字国債でまかなっている。これを市場は、政権には財政健全化への姿勢がないと受けとる。

 2025年度の税収は84.2兆円で、前年度からの伸びが過去最高の9兆円になった。その結果、財政状況は改善に向かっているからいい、というのが政権側の理屈だが、この税収増は物価高の反映にすぎない。ということは、物価高のために歳出も否応なく増えるわけで、税収に余裕があるというのは詭弁にすぎない。

物価高対策が物価高を招く

 高市総理は、こうして物価高の最大の原因である円安をあえて放置しながら、「悲願」だといって、来年4月から食料品の消費税を引き下げようとしている。しかし、年間5兆円の財源は不明なままで、そのことがまた円安を招いている。物価高対策が物価高の原因をつくっていることになる。結局、消費減税が実現されれば、物価が上がって減税の効果は相殺され、5兆円の負担だけが残り、それが原因でさらに円安になって物価が上がる――。そんな流れがいまから見えるようである。

 政権はまた、ガソリンや電気代への補助なども次々と打ち出しているが、これらも財政悪化への懸念から円安を招く。ここでも物価高対策が物価高を引き起こす。

 もうひとつ指摘しておこう。先述したように、高市政権は企業がお金を借りやすいように、また、国が借金を返しやすいように、金融は緩和状態に、つまり低金利のままにしておきたい。だが、積極財政のせいで財政への信認が低下したのを受け、長期金利がどんどん上昇している。要するに、金融緩和による低金利を志向した結果として、悪い金利上昇を招いているという、到底笑えない笑い話のような状況に陥っている。

 まとめれば、高市政権のあらゆる経済政策はいま、物価がさらに上昇する方向にひたすら突き進んでいる。そのことに多くの人が気づいた日には、現在の高い内閣支持率は、もはや維持できないはずなのだが。

香原斗志(かはら・とし)
音楽評論家・歴史評論家。神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。著書に『カラー版 東京で見つける江戸』『教養としての日本の城』(ともに平凡社新書)。音楽、美術、建築などヨーロッパ文化にも精通し、オペラを中心としたクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』(アルテスパブリッシング)など。

デイリー新潮編集部

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