北海道の塾の勢力争い――「北大帝国」の下で進学会vs練成会vs“道外勢力”の三つ巴
いくら少子化の時代といえど、受験生あるところに塾・予備校あり。東京から800キロ以上離れた北の大地では、絶対的存在「北海道大学」を中心とした独自の教育市場が築かれている。各公立高校や中高一貫校が北大への合格実績を競い合う裏側では、塾もまたその実績を争い、さらにその“名門中学・高校”にいかに生徒を送り出せるかでも、熾烈なシェア争いが繰り広げられている。(西田浩史/教育ジャーナリスト、追手門学院大学客員教授、学習塾業界誌『ルートマップマガジン』編集長)
我が国最北端の地は、「日本一外に出たがらない都道府県」との異名もあるほどに、道内で一つの教育経済圏が築かれている。
その頂点に位置するのは、旧帝大の一つ、北海道大学にほかならない。もちろん道内から東京大学をはじめ首都圏への進学を志す層も一定数はいるが、他のエリアに比べその割合は小さい。
ゆえに道内の高校についても、上位層の序列は“北大への進学実績”で決まる。札幌市内にある東・西・南・北のトップ4校を筆頭に、札幌旭丘、旭川東などの公立校、そして立命館慶祥や函館ラ・サール、医学部合格実績で突出する北嶺などの中高一貫の実力私立校などが続くが、「北大への合格人数が多い順」と言ってしまってもいいだろう。特に歴史的に絶大なブランド力を持つ札幌南は、公立トップ校の中でも頭一つ抜けている。
なお上位校は基本的に札幌に集中している。先に挙げた旭川東や函館ラ・サールなど札幌市外の名門校も点在してはいるが、昨今は人口も教育市場も札幌に集約される傾向が著しくなっている。
「二強」が牽引する塾事情
こうした学校事情を前提に、塾市場も札幌を中心として成り立っている。牽引するのは進学会と練成会のツートップだ。共に北海道を代表する塾であり、道内に多くの校舎を構える。
この2強が公立トップ校の合格実績を競う基本構図だが、近年は少子化の影響でターゲットが広がり、中堅層の生徒数の競争も激化している。
一歩リードする進学会、運営する進学会ホールディングスは、東証スタンダード上場の大手企業。北大出身の講師陣を看板に、54年間で札幌南、札幌北へ毎年平均計240名超合格させている実績を強調する。歴史を重んじる少々お固めの風土だ。
そんな進学会に猛追をかけるのが練成会。堅実な進学会に比べ、経営者の方針が色濃く出ていて、昨今勢いを増している。塾関係者によれば、業界誌や各種会合にも積極的に顔を出し、今後の塾の方向性や新たな展開について自ら発信する場面が目立つという。こうした姿勢が、現在の勢いにつながっているとみられる。
これらに続き、ニスコ進学スクールも存在感は依然として大きい。トップ校への進学実績は二強に劣るが、“二番手校”や中堅校への高い合格実績を維持し、その面倒見の良さで手堅い支持を集める。
また現役予備校TANJIも地元の名門塾として見逃せない。札幌市内の「本校」しか校舎をもたないが、札幌南をはじめとしたトップ校への高い合格実績を維持し、また東大や北大も含めたトップ大へも堅調な実績を持つなど、大学受験部門の実績も豊富だ。格調高いアカデミックさがあり、筆者が毎年全国300の塾、722人の関係者を取材して、「経営手法を参考にしたい塾」「憧れる塾」を挙げてもらうと、必ず上位にランクインするのが同塾だ。
「規模は小さいものの、道内の学力上位層は誰もが知る名門塾です。過去にここに通っていた親御さんが、自分の子どもを通わせるケースも多いですね。たとえていうなら、東大合格者の絶対的な実績を誇る鉄緑会に似た雰囲気も感じます」(北海道の塾関係者)
〈新潮QUEでは、塾や予備校が繰り広げる熾烈な勢力争いについて、全国を10のエリアに分けて図解した「勢力マップ」を公開している。北海道編では、道内資本の塾模様の詳細に加え、東北の進学プラザをはじめとした道外からの参入組と“道内勢”がどんな争いを繰り広げているか、大学受験予備校の場合はどのような勢力図になっているか、それらから見える北海道の教育課題などについて、オリジナルの図を交えて詳述している〉


