「私の『推し』間違っていませんよね」「このペン正解ですよね」 名門校教師が見た、令和の子供たちの“正解病”

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公的なところでは「自分」を隠す子供たち

 子供たちが間違いを恐れていくら正解を欲したところで、「自分」が消えてなくなるわけではない。

 いや、むしろ学校をはじめとした社会の中で「自分」を押し殺さなければならないぶん、その反動で別のところでそれを誇示したいという気持ちが膨らむ。

 彼らが自己を表出させる空間として選ぶのがSNSだという。SNSの中であれば、匿名で「自分」を出すことができるし、そこでレスをもらうことによって自己承認欲求を満たすことができる。

 そうしてみれば、公的なところでは「自分」を押し隠して正解を求める一方で、SNSでは別人のように「自分」を出そうとする今の子供たちの心理的メカニズムが理解できる。

 教員は言う。

「我々教員が見ていて不安なのは、“正解病”の子供たちがSNSで間違った形で自己表現をすることです。それによってトラブルになることがものすごく多いんです。

 トラブルに至るケースは二種類あって、一つはSNSの中ではっちゃけて過剰なまでに自分を出し過ぎて袋叩きにされるケース、二つ目はSNSの中でも正解を求めてそうじゃない人や意見を見つけては正論でネットリンチをしようとするケースです。

 このようなSNSの使い方は、ネットの中でも反感を買い、最終的にはその子がバッシングされることになります。それがトラブルとして表に出てくるのです」

 たしかにSNSの中では極端な思考を書き綴ったり、必要以上に他者に正論を押し付けたりする人がいる。そういう人たちは、一周回って他者から批判されることになることも少なくない。

 教員はつづける。

「“正解病”の子たちは、自信がないので、他人から攻撃されて傷つくことを極端に恐れます。そのため、ゆがんだやり方で予防線を張ったり、自己防御したりします。

 最近よく見かけるのが自分は弱者であるという主張です。人から攻撃されたら『私はメンタルを病んでいます』『私はLGBTQなのです』などという。あるいは前もってプロ欄に『ADHD』『被虐待』とか書き込んだりする。

 つまり、自分は社会的弱者の立場にあるのだから、トラブルを起こすのは仕方ないとか、批判しないでくれとか、特別扱いしてくれという論調で自己正当化しようとするのです」

 周りからすれば、自分は障害とか病気だと主張されれば、その人を責めることができにくくなる。良いか悪いかは別にして、それが彼らなりの自己防御や予防線なのだとしたら、一定の効果はあるのかもしれない。

「自ら切り開いていく力を」と大人たちは言うけれど

 複数の教員によれば、“正解病”の子供は学力の高い学校の方が顕著だという。それだけ多くのところで正解を求められてきたということなのかもしれない。

 こうした人たちは、子供時代より、成人した後の方が様々な問題行動を起こすことが少なくない。その細かな事例は、漫画『教育虐待』にも描かれているので、ぜひ参考にしていただきたい。

 考えなければならないのは、教育に携わる大勢の大人たちが「これからは答えのない世界を自ら切り開いていく力が重要」と口をそろえているのに、子供たちがそれに逆行しているところだ。

 ならば本当に今の教育は、子供たちにとって適したものとなっているのか。

 それをもう一度考え直す時期にきているのかもしれない。

石井光太(いしい こうた)
1977年、東京生まれ。2021年『こどもホスピスの奇跡』で新潮ドキュメント賞を受賞。主な著書に『遺体 震災、津波の果てに』『「鬼畜」の家 わが子を殺す親たち』『43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層』『ルポ 誰が国語力を殺すのか』『教育虐待 子供を壊す「教育熱心」な親たち』など。『ぼくたちはなぜ、学校へ行くのか。マララ・ユスフザイさんの国連演説から考える』など児童書も多い。『ルポ スマホ育児が子供を壊す』(新潮社)はロングセラーとなっている。

デイリー新潮編集部

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