阪神はなぜ混戦セ・リーグから抜け出せないのか 近本離脱だけではない“強者の誤算”

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ここからどう立て直すか

 正捕手・坂本誠志郎の不振も見逃せない。セ・リーグ球団の関係者は、坂本の状態にも注目している。

「昨シーズンまで正捕手として活躍していた坂本が、今年に入って一気に成績を落としています。3月のWBCにも招集されていますが、ほとんど存在感を示せませんでした。配球面も、投手の良さを引き出すというより、相手打者との駆け引きで勝負するタイプです。他球団から研究されていると思います。坂本の状態が落ちていることが、投手陣の成績にも影響しているのではないでしょうか。オフにトレードで獲得した伏見寅威がある程度はカバーしていますが、彼らベテランを脅かすような若手捕手がいないこともチームの課題です」

 開幕10連勝を飾った高橋は、伏見とバッテリーを組んだ9試合では1失点以内に抑えている。一方、坂本と組んだ3試合は全て3失点以上だった。相性の問題は当然ある。坂本の打撃成績が低下し始めた6月以降、チーム成績も下降している。捕手の起用法は、後半戦の重要なポイントになりそうだ。

 最後に問われるのは、藤川監督以下、首脳陣の修正力である。別の球界関係者は、首脳陣の修正力をポイントに挙げる。

「藤川監督は戦力が整った状態でチームを引き継ぎ、昨シーズンに関しては故障者や極度の不振に陥る選手もいませんでした。監督の手腕というより、これまで球団が積み重ねてきた編成と育成の成果が大きかったと思います。ただ今年は、いろんな面で綻びが出てきている。こういう時にこそ首脳陣の真価が問われるところですが、藤川監督と一軍のコーチ陣は比較的若く、経験豊富な指導者がいません。その点は、前任の岡田彰布監督時代とは大きく違う部分かと思います」

 スポーツの世界には、勝っているチームは変に動かすべきではないという格言がある。昨季の阪神には、それがうまくはまった。大きく動かずとも勝ち切れるだけの戦力と安定感があったからだ。

 今年は違う。近本の離脱、救援陣の誤算、坂本の状態低下、捕手起用の難しさが一気に表面化している。選手起用や采配に大きな変化はまだ見られない。このまま昨季の成功体験をなぞるだけでは、混戦の中にのみ込まれかねない。

 独走候補だった阪神は、ここからどう立て直すのか。藤川監督に求められているのは、救援陣の再編、捕手起用の見直し、そして停滞した空気を変える決断である。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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