「山林から離れた地域でも目撃情報が」…秋田県羽後町長が明かす「クマ被害」激増の背景「LINEや防災メールで出没状況を伝えています」

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山から離れた地域にも出没

――異常事態ですね。羽後町は約7割が山林だそうですが、どのような地域で目撃情報が多く寄せられていますか。

佐々木:やはり山際の元西地区、飯沢地区では目撃件数が多いですね。西馬音内地区は羽後町の中心部ですが、山際にある田沢と床舞という地域で目撃されています。そう聞くと、「山の近くなら、クマが出てもおかしくないのではないか」と思われるかもしれません。ところが、最近では山からかなり離れた、平地の三輪地区でも目撃されているのです。

――三輪地区はクマが滅多に出ない地域だったのでしょうか。

佐々木:私は三輪地区で生まれ、50年以上住んでいます。クマ問題がこれほど騒動になる前は、50年間でクマが目撃されたのは2~3回とか、その程度に過ぎませんでした。

 ところが、去年の秋以降は三輪地区でも頻繁に目撃情報が寄せられるようになっています。もはや、どこでクマに出くわしてもおかしくありません。このままでは安心して外出できないのではないかという不安が、町民の間にあります。

――クマはどうやって、山から離れた三輪地区までやってくるのでしょうか。

佐々木:町内を流れる雄物川や大戸川は、草が茂っている状態で、藪になってきています。その藪の中を移動し、クマが山から下りてきていると考えられます。

誘因木の伐採、電気柵の設置に補助

――不安が募っている町民も多いと思いますが、羽後町ではどんなクマ対策をしているのでしょうか。

佐々木:出没情報の多い場所に、クマを捕獲する箱罠を設置しています。そして、被害や出没の情報が寄せられたら、LINEや防災メールで町民に出没状況をお知らせしています。全県のクマの情報がわかる「クマダス」にも登録し、「テレビ回覧板」というクマの情報やデータを登録できるシステムにも載せています。

――クマを寄せ付けないために、餌になる果樹が実る木を伐採している自治体もあります。

佐々木:羽後町でも柿や栗などの誘因木の伐採や、電気柵の設置に対する補助金を出しており、クマを市街地に引き寄せないために町民の支援をしています。幸いにも、柿や栗の伐採は進んでいます。

 ただ、空き家にある木がまだ残っています。私有地ですし、個人の所有物ですから勝手に伐採ができません。羽後町では空き家も問題になっていますが、そこにある誘因木をどう扱うか、という点も今後の課題です。

高齢者にどう情報を伝えるか

――空き家問題は日本全体で問題になっている課題です。とはいえ、羽後町ではクマ対策をしっかり行っているという印象を受けますが、課題もあるのでしょうか。

佐々木:3年ほど前、羽後町では防災行政無線を廃止しました。当時は、クマの問題がここまで顕在化していませんでした。防災行政無線のデジタル化には3億円ほどかかるということで、予算の都合上廃止し、替わりとして、全世帯に防災ラジオを配布しました。

 防災ラジオは、災害レベル4以上の時は緊急ラジオ放送が自動的に入るようになっています。しかし、クマの出没に関しては、防災ラジオでは情報伝達ができません。スマートフォンを持っていない高齢者にはLINEや防災メールが届かない現状があり、いち早く適切な情報を伝えられるよう、試行錯誤している段階です。

第2回【「今年は箱罠に全くクマがかからない…」 クマ被害が相次ぐ秋田県で囁かれる「明らかにクマが賢くなっている」 おびき寄せる“餌のスイカ”だけが消えることも】では、秋田県羽後町の佐々木康寛町長に、問題が深刻化しているクマ問題についてより詳しく話を伺っています。

ライター・山内貴範

デイリー新潮編集部

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