「コメ騒動」から一転して「未曾有のコメ余り」…貧しくなった日本人にとってコメは高級品になってしまった 農家が指摘する「鈴木農水相のメッセージ不足」

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貧しくてコメも買えない日本人

 日本のコメ農家が日本でコメを作り続ける──つまり日本における稲作の持続可能性を考えるには、農家の収入だけを見ても問題は解決されないことが分かる。消費者の収入も大きな要素なのだ。

「高度経済成長期は国が農家からコメを高く買い、消費者に安く売っていました。それを支えた食糧管理法は1995年に廃止されました。1990年初頭にバブルが崩壊し、日本経済は“失われた30年”に突入しますが、それでも5キロ4000円台のコメを買う消費者は少なくなかったのです。しかも当時の農家は、日本経済の底力に助けられることもありました。例えば男3人の兄弟がいたとします。長男がコメ農家を継ぐと、次男や三男は都市部で正社員として働くことができました。メイドインジャパンの自動車や家電が輸出されて利益を上げていたため、それが回り回って次男や三男の生活を安定させ、長男が農業経営で苦しんでも経済的に助力することが可能だったのです」(同・木村氏)

 ところが日本がデフレ経済に突入すると、正社員で働くことは「夢のまた夢」になってしまった。氷河期世代を筆頭に日本人の収入は激減したにもかかわらず、政府は消費税増税を繰り返し、同じように増え続ける社会保障費は財布を圧迫し、老若男女の誰もが貧しくなってしまった──。

減反は必要

「アメリカやカナダ、ロシアといった国々は広大な国土があり、農業の大規模化が容易です。一方の日本は7割が山地なので、もともと大規模化は難しい国なのです。『コメをどんどん生産し、余った分は海外に輸出すればいい』と主張する論者もいますが、コメの世界市場は長粒種のインディカ米が主流です。日本のコメは短粒種のジャポニカ米で、それほど需要がないのです。となれば日本のコメは日本人が消費することを最優先に考えるべきであり、それは消費者の収入が今よりも増えることも重要なのです」(同・木村氏)

 木村氏の描く最悪のシナリオは「離農の続出→中山間地の水田が放棄→コメ生産量の絶対的不足→価格の暴騰→国産米離れの促進→輸入米の増加→離農の続出」という悪循環だ。

「実は鈴木憲和・農林水産大臣は消費者だけでなく、農家の評判も決して良くはありません。ただし私は鈴木農水相が掲げる【1】実質的な減反を進める、【2】大規模化を進める、というビジョンには賛成しています。【1】は、やはり日本人がコメを食べなくなった以上、生産に制限をかける必要があると考えています。減反分は転作するわけですが、ここでポイントは有機栽培に切り替えることです」

鈴木農水相のマイナス評価

 逆転の発想と言えるが、木村氏によると農薬を使わないと自動的に収穫量は落ちるという。収穫が少なくなるのは問題のような気がするが、現実は逆で、人口減社会の日本にとっては理想的な“生産調整”なのだ。

「海外から輸入している肥料原料も削減できますし、肥料を作るエネルギーも必要ありませんから文字通りの省エネです。さらに世界市場では有機栽培の野菜は人気で、輸出の追い風にもなります。一方、日本で可能な限りコメ農家の大規模化を進めれば、生産コストが下がり、生産者にも消費者にも納得できる価格帯でコメが売られるはずです。ただし、鈴木農水相は基本方針こそ賛同できますが、それを現実に推し進めていく力が全く伝わってこないのはマイナス評価です。令和の米騒動から始まり、今の危機的なコメ余りの状況に際し、鈴木農水相は国民に何のメッセージも発信できていないと批判せざるを得ません」

 第1回【コメ価格「5キロ3000円割れ」が現実に…忍び寄る“暴落”に生産者は「2000円台まで落ち込めば採算が合わない。コメ農家の“倒産”が相次ぎますよ」と悲鳴】では、コメ余りが危機的な状況に達しており、秋にもコメ価格の暴落が起きる可能性について詳細に報じている──。

デイリー新潮編集部

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