巨人の名二塁手が生んだカツカレー 長嶋、掛布にもあった“球界グルメ”誕生秘話
球場グルメは、今やプロ野球観戦の大きな楽しみのひとつである。
各球団の本拠地では、選手プロデュースグルメと呼ばれる限定メニューが数多く販売されている。ヤクルトの本拠地・神宮球場でも、池山隆寛監督の必勝そばめし、小川泰弘のライアン(あん)パン、山田哲人の牛たんビビンバてっぱち丼など、多種多様なメニューが並ぶ。【久保田龍雄/ライター】
【写真】カツカレーにフカヒレラーメン…往年のレジェンド野球選手がゆかりの人気メニュー
カツカレーは即戦力だ
ただ、球界とグルメの関係は、最近始まったものではない。選手の何気ないリクエストがきっかけで誕生し、今も多くの人に愛されているメニューがある。
今や国民食ともいうべきポピュラーなメニューになったカツカレーは、1948年、巨人の二塁手・千葉茂のリクエストで誕生したことで知られる。
当時、巨人のユニホームを仕立てていた「銀座テーラー」を訪れた千葉は、店主から紹介された近くの洋食レストラン「銀座スイス」が気に入り、多摩川の練習後や試合の前後などによく利用していたという。
ある日、阪神戦の試合前、空腹だった千葉は「カレーライスの上にカツレツを乗っけてくれ」とリクエストした。カツを「勝負に勝つ」にかけてゲンを担いだようだ。
当時はカレーライスに何かをトッピングするという発想はなく、想定外の注文に店側も周囲の客も驚いた。だが、カレーライス、カツレツのどちらも大好物だった千葉は、美味しそうにペロリと平らげ、時には二皿食べることがあったという。
カツレツを乗せると見た目も華やかになる。大卒会社員の初任給が約5000円だった時代に、特別メニューとして180円で売り出したところ、たちまち人気メニューとなり、あっという間に全国へ広がっていった。
筆者は2010年代前半、仕事で築地方面に行く機会が多かったため、「銀座スイス」築地店を何度か利用した。同店は現在、「TSUKIJI.カフェ.スイス」の名称で営業している。店内には「カツカレーは即戦力だ」と書かれた千葉氏直筆の色紙が飾られていた。
その後、銀座の本店にも足を運んだ。現在は「元祖カツカレー」「千葉さんのカツレツカレー」「千葉さんのカツレツカレープレミアム」を味わうことができる。
巨人選手時代の長嶋茂雄氏の要望で誕生したと伝わるのが、現東京ドームホテル直営店「後楽園飯店」のフカヒレ姿煮入りそばだ。
後楽園球場時代、長嶋氏は中華そばとフカヒレの姿煮を店舗や出前でよく注文していた。ある時、「いっそのことフカヒレを麺に乗せたらどうか」という話になり、この一言がきっかけで新メニューが誕生したという。
当時のチーム関係者も同様の証言をしており、長嶋氏考案のグルメと呼んでもいいだろう。
一方で、長嶋氏らしいエピソードも残っている。ラーメン1杯が100円から200円ほどだった時代に、10倍以上はしたとみられるフカヒレ姿煮そばを「これは安い!」と言いながら食べていたというのだ。
前出の千葉氏ともども、巨人の栄光の“背番号3”が新メニューの生みの親になったのは、偶然のめぐり合わせとはいえ興味深い。
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