真犯人は「もっちゃん」ではない 「田鎖ブラザーズ」最終回、現場にいた“もう1人の男”の正体
もう1人の男
もっちゃんが子供たちを殺せなかったのか。あるいはもっちゃんは誰も殺せず、後から来た別の男が田鎖夫婦を殺害したのか。その男は子供たちも殺そうとしたが、稔を刺したら騒がれたため、あきらめて逃げたのか。犯行経過を考えると、おそらく真相は後者だろう。
ただし、もっちゃんが田鎖夫婦を死なせてなかった場合も犯行グループの一員であることに変わりはない。共謀共同正犯にあたる。このため、第9回の1999年の回想シーンで、もっちゃんが辛島に「自首させてください」と懇願したのは不自然な言動ではない。
辛島からもっちゃんへの犯行指示の場には、当時は神奈川県警捜査1課の刑事だった笹岡隆弘(柳憂怜)も同席していた。笹岡は反社会的組織の五十嵐組と癒着する悪徳刑事だった。辛島も笹岡も共謀共同正犯である。
もっちゃんの中華料理店「もっちゃん」は五十嵐組と笹岡によって不当な立ち退きを迫られていた。やはり立ち退きを強要されながら応じなかった畳屋の店主・加賀正吉は五十嵐組に射殺された。田鎖夫婦殺害から約1か月半前の1995年3月3日のことだった。
笹岡は店が立ち退きに応じなかったら、もっちゃんの母親・カル(三谷侑未)も加賀と同じ目に遭うとほのめかした。ただし、辛島の望む田鎖一家殺害を実行してくれたら、立ち退きは白紙にすると約束した。
もっちゃん以外の男がどうして殺害現場に現れたのか。見届け人だったのではないか。この事件には五十嵐組が間接的に絡んでいる。反社は敵対勢力に殺し屋(鉄砲玉)を差し向けるとき、大抵は見届け人を付ける。
見届け人は計画が実行されるかどうかを確かめるのが役目。殺害が失敗したときは自分が代わりに犯行に及ぶこともある。田鎖宅に現れた別の男も見届け人のような存在だったのではないか。
考えられる見届け人候補は2人。まずは笹岡だ。自分と辛島が首謀者だから、失敗したくない。五十嵐組に「もっちゃん」の立ち退きをあきらめさせるのだから、なおさら。一方で、もっちゃんと接していたから、一家殺害が出来そうにない男だとも分かっていたはずだ。
もう1人の見届け人候補は小池俊太(岸谷五朗)。現在は青委署刑事課の係長で、真の上司だが、田鎖夫婦殺害の当時は県警捜査1課に所属し、笹岡の相棒だった。
小池が疑わしい根拠はいくつかある。まず、銃密造のほぼ全容を掴んでいたノンフィクション作家・津田雄二(飯尾和樹)の取材メモを田鎖兄弟から不当に奪った。現在は工事現場で働いている笹岡にそれを渡した。第9回だった。
同じ第9回、辛島と妻で山岳登山家のふみ(仙道敦子)が自宅から姿をくらます際、小池は辛島宅前にいた。逃走を助けたのか。
ただし、小池は見届け人とは思えない発言をしている。笹岡に津田のメモを渡した際の言葉である。
「あの事件はまだ終わってません。オレも同罪ですが。どうやって終わらせますか」
見届け人であるなら当事者の1人なので「オレも同罪」という言い方はしない。これは事件と距離のある人間の言うことだ。
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