主人公は50歳のスーパー従業員…若者から圧倒的な支持を受けたワケ 「時すでにおスシ!?」が覆したドラマ界の常識

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「リボーン」は大人向け

 一方で「リボーン」も面白いドラマだった。若い視聴者の支持は薄かったものの、それでも個人視聴率では上位に食い込んだのだから、立派である。M3(50歳以上男性)、F3(同女性)の支持が厚かった。

 主人公の非情な企業経営者・根尾光誠(高橋一生)は階段道路を転落し、商店街のクリーニング店の跡取り息子・野本英人(同)と入れ替わる。このとき、時代は2012年に戻った。

 この設定があったから、10代のT層に敬遠されたのはやむを得なかった。未来を知っている英人は2014年のソチ冬季五輪で羽生結弦選手が金メダルを獲得することや16年の米大統領選でドナルド・トランプ氏の初当選などを言い当てた。これにより、大物財界人の信用を得る。

 T層はソチ五輪時には1歳から7歳。記憶がないだろう。米大統領選時には3歳から9歳。やはりおぼえていないのではないか。すると、英人が記憶にある未来を披露する場面の面白みが半減する。

 根尾は熾烈なビジネス界の人間だったが、野本は人情を最優先する商店街の住民。若い視聴者にはどちらも身近に感じるのは難しかったに違いない。

 根尾はビジネス至上主義。やさしさは欠片もなく、人の涙も気にしない。こんな人間が実在することを肌で知っているのは長く生きて来たM3、F3の視聴者だけだろう。

 野本が暮らす商店街の住民についても同じ。住民は商売のことをほとんど考えてなかった。日々、楽しく暮らせれば良いと思い、英人の父親・野本英治(小日向文世)や精肉店の室田秀子(岸本加世子)たちは酒盛りを繰り返した。

 M3、F3の視聴者には愛すべき人たちと映るが、若い視聴者は理解に苦しんだはず。英人も当初は商店街の住民にあきれ返り、理解するまでに時間がかかった。

 このドラマは大人の寓話だった。人生の勝ち組とは根尾のようにビジネスの成功者なのか、それとも気の合う仲間たちとささやかな幸せを噛みしめながら暮らす者なのか。ドラマ側が考える勝ち組は後者だが、若いうちは根尾が勝ち組と考える人が多いかも知れない。なにしろ、商店街の住民のダメっぷりが凄まじかった。

 もっとも、若い視聴者が観るドラマと大人が支持するドラマのどちらが優れているのかは誰にも決められない。若い視聴者が観たほうが、CM収入が高くなるだけである。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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