「韓国ではよくあること…」起業パートナーに裏切られ20代で借金4億ウォン 全財産を渡して母と絶縁した30代韓国人男性が望む「普通の幸せ」

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戒厳令でゼロからのスタート

 それでもなお、「むしろ冷酷だったのは僕のほう」と自責する姿が痛々しく見えた。しかも不幸はそれで終わらない。2024年12月のことだ。

「尹錫悦元大統領の戒厳令騒動が起きて、契約が全部飛んだんです」

 親に全財産を渡した直後、戒厳令により外国人投資家が逃げた影響で国内株や不動産市場が大きく暴落し、仕事の売り上げは半分どころか、それ以上落ち込んだ。再びゼロからのスタートを余儀なくされたキムさんだが、挑戦はもう沢山だと話す。

「ずっと挑戦ばかりしてきたから、そろそろ終わりにしたいです。家を飛び出すのも挑戦、未成年で仕事を見つけるのも挑戦、起業も、借金返済も、店を持つのも全部挑戦だった」

 彼の人生を単純な“ど根性物語”などとまとめることはできない。キムさんは人一倍優れた能力を持ちながらも、それが環境要因や生育環境の影響により生かされるチャンスを失っているからだ。

キムさんの切なる願い

 そんなキムさんの今の願いは、意外なほど素朴だ。

「僕が求めているのは、派手な逆転劇などではないんです。毎月きちんと給料が出て、生活が崩れず、普通に家庭を持ち、普通の幸せを得たい。ただそれだけです。そしてもし子どもができたら、絶対に自分と同じ目には遭わせたくないです。子どもが失敗しても、たとえ刑務所に入るようなことがあっても、親は子どもの味方で、いつでも頼れる柱であるべきです。自分の親がそうではなかった分、自分がそういう存在になりたい」

 格差や家庭環境にかかわらず、努力が普通に報われる人生でありたい。日本においても他人事ではないはずだ。

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 キムさんの人生は、12歳で家を出た日から大きく変わった。記事前編では、江南で育った少年が家庭を離れ、働きながら住まいを転々とするまでを紹介している。

安宿緑
東京都生まれ。ライター、編集者。東京・小平市の朝鮮大学校を卒業後、米国系の大学院を修了。朝鮮青年同盟中央委員退任後に日本のメディアで活動を始める。2010年、北朝鮮の携帯電話画面を世界初報道、扶桑社『週刊SPA!』で担当した特集が金正男氏に読まれ「面白いね」とコメントされる。朝鮮半島と日本間の政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様と心の動きに主眼を置く。韓国心理学会正会員、米国心理学修士。著書に『実録・北の三叉路』(双葉社)。

デイリー新潮編集部

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