「韓国ではよくあること…」起業パートナーに裏切られ20代で借金4億ウォン 全財産を渡して母と絶縁した30代韓国人男性が望む「普通の幸せ」

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【前後編の後編/前編を読む】「ポケットに500円だけ入れて家を出た」虐待家庭から12歳で逃げた少年 韓国ソウルで“ストリートチルドレン”になった30代男性の過酷すぎる半生

 端からは裕福に見える家庭に生まれながら、父母から虐待を受けて育ったキム・チソンさん(37、仮名)は、12歳で家出し、働きながら住まいを転々とする少年期を送った。唯一の心の支えであった祖父母を相次いで失うと、高校卒業資格を取って進学した大学も、生活費を稼ぎながら通い続けることができず中退する。ライターの安宿緑さんがキムさんの半生を通じ、韓国社会で足場を失った若者の行方を追った。

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 そしてまた、キムさんの受難は続く。大学を辞め、軍隊へ行き、除隊が近づく頃だった。

 休暇をまとめて使って外で金を稼ぐことにしたキムさんは、夜の街で契約書にサインを取る営業のような仕事を始めた。

 1件ごとに報酬が出て、うまくいけば1日に20万ウォン、30万ウォン(約2万1,000円~3万2,000円)稼げることもあった。その働きぶりを見た関係者から声がかかり、除隊後、本格的にアプリ事業へ関わることになる。

 彼を誘った男はその会社の幹部で、「自分名義では事業ができない事情がある」と言ってキムさんの名義で会社を設立し、彼が実務を回す形になった。

 集まった投資は合計3億5,000万ウォン(約3,700万円)ほど。飲食店が空き時間帯にクーポンを配信し、近くの客を呼び込む、いわばタイムセール型のアプリだった。大学生やお金のない20代にはかなり実用的で、店側の反応も悪くなかった。ランチのピーク後のアイドルタイムを埋めるには、確かに理にかなうビジネスモデルだった。

 だが、うまくいきかけたところで大企業が割って入り、買収したり類似サービスを始めて市場を奪ってしまう。韓国ではよくある話だ。

 しかも資金の流れを確認すると、あるはずの金が消えていた。共同経営者が裏で投資金を抜いていたのだ。

 そこで彼は腹をくくり、果敢にもカカオやTMON(韓国の大手EC企業)などに、「うちの営業力とデータベースを買ってくれ」と持ち込んだのだ。

 結果的にカカオへ1億ウォン(約1,060万円)で売却成功したが、その金は社員の給料と投資家への返済に消え、手元に残ったのは1,500万ウォン(約160万円)程度。20代半ばにして、4億ウォン(約4,200万円)近い借金を抱える身となった。

「韓国では共同経営者に金を持ち逃げされたり、騙されるのはよくあることなんです」

営業から“歌い手”、そしてホスト転身

 7年近くかけて彼はその借金を返すことになるが、まさに茨の道だった。

 クレジットカードの路上営業をして1年でチーム長にまでのし上がるも、国がオフライン対面のカード営業を禁止したため失職。

 彼女の家に転がり込み、飲食店で働く日々を送ったが時給の仕事では追いつかないため、客に頼まれて歌を歌い、チップをもらうようになった。

 日によっては1日100万ウォン(約10万6,000円)稼ぐこともあった。さらに、カラオケバーのような場所で「DJ」と呼ばれる、実際には歌を歌って場を盛り上げる役も務めた。そのうち、座って話すだけで大金を稼ぐホストたちを見て、「自分にもできるかな」と思うようになった。そうしてホストに転身し、最初は江南、その後は弘大で働くようになった。

 そこでもキムさんは初日から波乱万丈だった。

「信じられないほど美しい容姿の」女性客に指名され、酔いつぶれた彼女をホテルに休ませて店を出た。すると、すぐに電話がかかってきた。

「あなたに興味があるの」

 そこから交際が始まったが、女性は江南では有名なルームサロン嬢で、稼いでいた一方、酒が入ると人格が変わったように暴れる癖があった。

 ある日は、キムさんが彼女の友人に丁寧に挨拶したことに腹を立て、顔に水を浴びせ、ついには店のテレビにグラスを投げつけ破壊した。親の影響で暴力的な人間が極端に苦手だったキムさんは限界を迎え、関係は1か月で破綻した。

 美しいものに手を伸ばしても、背後には壊れた家庭の影が追いかけてくる。親を嫌いながらも、親と似たような人に惹かれ、傷つけられる。虐待の影はいつまでも付き纏った。

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