「韓国ではよくあること…」起業パートナーに裏切られ20代で借金4億ウォン 全財産を渡して母と絶縁した30代韓国人男性が望む「普通の幸せ」
借金のため“援助交際”
ホストのほかにも、飲食の現場で皿洗い、接客、キャッシャー、マネージャー、店長まで一通り経験し、自分の店を出すまでになった。ウイスキーやワインも出し、女性客も気軽に来られる雰囲気のバーだった。
だがこれもまた、共同経営者の裏切りに遭う。パートナーは料理の腕はあるが、売り上げを全部使ってしまうタイプで、給料も精算も滞るようになり、結局閉店した。
「また詐欺に遭ったようなものだった」と彼は言う。
その後は店のマネジメントに近い仕事もしたが、酒を飲み、歌を歌い、人に気を使う生活に身体が悲鳴を上げ、1か月ほど入院もした。
そんなさなか、彼の事情を知る保険会社の女性支店長から「1か月だけ付き合ってほしい」と言われ、5,000万ウォン(約530万円)を受け取ったこともある。彼は「借金を返したい一心で1か月だけ“援助交際”し、きれいに別れた」という。
およそ7年かけて借金を返し終えた後は反動で、ほとんど家にこもるような鬱状態にも陥った。出前を取り、映画を見て、テレビを見て、何もない時間を過ごした。
1年後、ようやく重い腰を上げて始めた携帯電話販売の仕事でも、また詐欺に遭った。営業成績最下位の支店をキムさんの力で上位まで引き上げたが、社長が裏で名義盗用による不正契約をしていたのだ。社長は逮捕され、キムさん自身も捜査対象になったが、何も知らなかったため無罪放免となった。
「人よりも状況を信じる」が…家族との完全なる決別
アプリ、飲食、携帯電話の販売……節目ごとに、信じた相手に幾度となく欺かれた結果、彼が辿り着いた境地がある。
「他人を信じることと、好くことは違う。僕は人よりも状況を信じるんです」
いま何が起きているか。この状況に、その人間を入れても大丈夫か。相手が嘘をついていると気づいても、その嘘をわざわざ暴くことに意味がなければ黙ってやり過ごす。人間性に期待しない代わりに、自分の判断と環境の読みを信じる。これは達観というより、傷つきすぎた人間が編み出した生存マニュアルのようなものかもしれない。
そんな彼でも、再び人の絆を求めてしまうことがあった。コロナ禍で母から「会いたい」と泣きながら連絡が来たときだ。
「ようやく家族らしくなれるのではないか」との淡い期待から、ソウルの住居を引き払って釜山へ向かった。だが呼ばれた理由は、自分に会いたかったからではなく、母が父の暴力を恐れ、キムさんをその盾にしたかっただけだった。
両親はビリヤード場を経営しており、一応手伝ったがコロナ下では手も足も出ず、またしても巻き込まれただけで終わった。その後、ソウルの知人に「1,000万ウォン(約106万円)貸すから上がってこい」と声をかけられ、彼はソウルへ戻り、不動産仲介の仕事を始めた。
そんな中とうとう、親との完全なる決別をしたのは2024年8月。彼のもとへ、母から「2億ウォン(約2,100万円)貸してほしい」という連絡が入った。
奇しくも、彼の当時の全財産とぴたりと一致していた。もし渡さなければ、家は競売にかけられるという。悩んだ末、その2億ウォンをキムさんはすべて渡した。車も売り、現金はほとんど残らなかった。
「親孝行なんかじゃありません。返さなくていいから、その代わりもう二度と連絡してくるなと伝えました」
[2/3ページ]

