「子連れ狼」に挑む「中村獅童」 叔父「萬屋錦之介」の当たり役にかける思いとは

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タテノリの西郷隆盛も

 04年には日本テレビで「丹下左膳」に主演。隻眼隻手の凄腕浪人・左膳は浅草で小唄を教える櫛巻きお藤(ともさかりえ)の居候で、百万両の隠し場所が秘められた壺を巡って柳生家と公儀隠密の争奪戦を繰り広げる。さらに、06年の「天下騒乱~徳川三代の陰謀」(テレ東)では柳生十兵衛を、10年の「ジロチョー 清水の次郎長維新伝」(同前)では森の石松を演じ、いずれも隻眼ヒーロー役が続いた。本人は「伊達政宗をやってないので、いつかやりたい」とのことだ。

 私が個人的に大好きなのはEテレの小学6年向け教育番組「歴史にドキリ」(12年~現在)だ。放送時間は10分。文科省が指定する授業で教えるべき歴史上の重要人物42人に「歴史研究所所長」の獅童がなりきり、オリジナルの「ドキリ★ソング」を歌って踊りながらその人物の功績をひとり芝居で伝える。古代衣装の獅童卑弥呼と侍女たちが「まじないでくにおさめたとされてるわ~」とミラーボールの光の中で舞い踊ったかと思えば、山羊ヒゲの獅童秀吉が「関白宣言(秀吉流)」を語るように歌う。さらに、極太眉毛の獅童西郷隆盛は「TOU-BAKU!」とタテノリで飛び跳ねる……。これは幕末のブルーハーツ!? 教育番組のひとり芝居とはいえ、これだけの偉人役をこなしたのは獅童だけだろう。この番組に出演して以来、子どもたちから声をかけられる機会が増えたと聞く。

「子連れ狼」では演出も

 NHKの大河ドラマには、「春日局」(89年)、「毛利元就」(97年)、「武蔵 MUSASHI」(03年)、「八重の桜」(13年)、「いだてん~東京オリムピック噺~」(19年)などに出演。三谷幸喜作品の「新選組!」(04)では近藤や土方らとは違う角度で新選組を見つめる架空の人物・滝本捨助を、「鎌倉殿の13人」(22年)では実力がありながら孤立していく武将・梶原景時を演じている。

 こうして確実に実績を積み上げ、ついに実現した「子連れ狼」。獅童は井上昌典とともに共同演出も務める。

 一刀は湯本宿で遊女・お浜(中村七之助)の依頼を受ける。彼女の親族と夫を斬殺した杉戸監物(中村勘九郎)一味と闘う一刀を、宿敵・柳生烈堂(中村錦之助)の息子・柳生軍兵衛(尾上松也)が追う。

「拝一刀は喜怒哀楽、自分の感情を押し殺す。情熱型というか爆発する役が多いので、ずっと冷静沈着みたいな役は初めてです」と言う獅童の一刀は、刺客でありながら品格を感じさせる。ドラマ版で使われた懐かしい主題歌とともに、大五郎と目を合わせる一刀の姿にぐっときた。そして立ち回り。一刀の水鴎流が舞台で見られるとは! 父子の冥府魔道の旅はまだまだ続く。続編へのファンの期待もまだまだ続くのである。

ペリー荻野(ぺりー・おぎの)
1962年生まれ。コラムニスト。時代劇研究家として知られ、時代劇主題歌オムニバスCD「ちょんまげ天国」をプロデュースし、「チョンマゲ愛好女子部」部長を務める。著書に「ちょんまげだけが人生さ」(NHK出版)、共著に「このマゲがスゴい!! マゲ女的時代劇ベスト100」(講談社)、「テレビの荒野を歩いた人たち」(新潮社)など多数。最新刊は三谷幸喜との共著「もうひとつ、いいですか?」(新潮社)。

デイリー新潮編集部

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