「子連れ狼」に挑む「中村獅童」 叔父「萬屋錦之介」の当たり役にかける思いとは
ペリー荻野が出会った時代劇の100人。第41回は中村獅童(53)だ。歌舞伎俳優であることは言うまでもないが、映画やドラマでは現代劇や時代劇はもちろん特撮ヒーローまで何でも演じることで知られる。そんな彼が六月大歌舞伎(歌舞伎座6月3~25日)で演じる「子連れ狼」の拝一刀は、叔父である萬屋錦之介(1932~1997)の当たり役だった。作品にかける甥っ子の思いとは。
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ついにこの日が来た。6月3日に初日を迎えた歌舞伎座「六月大歌舞伎」昼の部で中村獅童の「子連れ狼」が上演されている。
「子連れ狼」は、柳生烈堂率いる裏柳生(柳生一族の中で暗殺など汚れ仕事を請け負う面々)に妻を殺された元公儀介錯人・拝一刀が、身分を奪われ、「一殺五百両」の刺客となって、箱車に乗せた一子大五郎と壮絶な復讐旅を続ける物語だ。
原作・小池一夫、画・小島剛夕の劇画漫画がオリジナルで、映画では若山富三郎、田村正和、ドラマでは高橋英樹、北大路欣也が演じている。中でも社会現象ともいえるブームを巻き起こしたのは、日本テレビが1973年から76年にわたって3シリーズを製作した、獅童の叔父・萬屋錦之介の主演作だ。74年6月には歌舞伎座の名物「萬屋錦之介特別公演」で舞台化。錦之介ゆかりの今年の6月公演に、獅童の拝一刀、5歳の次男・夏幹の大五郎が登場した。
私は10年ほど前、新潮社の企画で獅童と対談した際、「いつか『子連れ狼』を」とリクエストした。それが実現したのだと思うと感慨深い。
獅童がこの役を意識したのは2006年頃だった。
「ローン・ウルフ」
「クリント・イーストウッド監督の『硫黄島からの手紙』の撮影でアメリカに行っている時、現地の映画スタッフといろいろ話す中で『ローン・ウルフ』という言葉がよく出てきて、それが『子連れ狼』のことだったんです。そのコミックがすごく人気があると。その後、仕事でドイツに行ってホテルでテレビつけたら、叔父・錦之介の『子連れ狼』がドイツ語の吹き替え版でやっていました。海外の人にも響く作品なんだと実感しました」
獅童は1972年、初代・中村獅童(本名・小川三喜雄)の長男として歌舞伎の名門・小川家に生まれた。父は14歳で歌舞伎役者を廃業したが、その長男は6歳で日本舞踊と長唄を始め、8歳で2代目・中村獅童を名乗り初舞台を踏んだ。近年では初音ミクと共演した「超歌舞伎」など、革新的な作品でも注目を集めた。
時代劇では加藤剛・主演の「大岡越前 第14部」(96年)に岡っ引きの子吉役で登場。調子がいい若者の子吉は、お忍びで町にやってくる将軍・吉宗(山口崇)の正体を知らず、言いたいことをポンポン言うため奉行や同心たちをハラハラさせる、コメディリリーフ的な存在でもあった。獅童にとってはこれが初の京都時代劇(東映太秦)で「知り合いがいない中、十手を片手にオープンセットを走り回ったり、未経験のことが多くて緊張した」というが、時代劇のプロ集団の現場で大いに刺激を受け、同年の「忠臣蔵」(フジテレビ)では上杉綱憲、00年の「次郎長三国志」(テレビ東京)では追分三五郎を演じた。
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