なぜ犯人は5歳の弟まで刺したのか、真犯人は誰なのか 衝撃展開の「田鎖ブラザーズ」ラストはどうなるのか

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晴子も過去を追う

 両親殺害時、田鎖宅の前には今は質屋で情報屋の足利晴子(井川遥)がいた。その理由がぼんやりと見えてきた。密造銃の取引中のトラブルには晴子の亡父が深く絡んでいるのだろう。

 晴子の父は漁師だった。密造銃を港から沖合まで運んだか、あるいは取引の現場を目撃したのではないか。晴子はこれまでにこう言っている。

「もう何年も前だけど、酔っぱらって海に落ちて、死んじゃった」(第6回)

 おそらくは五十嵐組の仕業だ。県警の笹岡がいたから、捜査の目をくらますのは難しくなかったはずだ。

 取引中のトラブルがあった同4月13日午後10時28分、津田は朔太郎を目撃した。プラスチックケースに入れたものを辛島金属工場に運んでいた。晴子の父の遺留品か、それとも何らかの理由で水没した密造銃か。

 晴子は父の死んだ現場に朔太郎がいたことを知り、真相を尋ねようと考え、殺害事件当夜も田鎖宅の前で待っていた。あるいは関係者の出入りをチェックしていた。

 晴子たち父子は田鎖宅の近隣に住んでいた(第3回)。朔太郎もご近所さんである晴子の父の死を見過ごすことは出来なかったはずだ。

 ここで第1回の意味深な回想シーンの中身が浮かび上がってくる。殺害事件当日の昼間、朔太郎は自宅に来た辛島に向かって、「よろしくお願いします」と頭を下げ、何かを頼んだ。

 その願いは銃密造をやめたいというものだと考えていたが、違ったようだ。死んだ晴子の父について善処を頼んだのだと見る。

 辛島は「分かってる」と鷹揚にうなずいた。だが、それはウソだった。辛島とふみ、五十嵐組は田鎖夫妻の死によって問題の決着を図ったと見る。取引トラブルに居合わせ、密造銃を隠し持つ朔太郎は厄介な存在だったはずだ。

 津田のノートには辛島金属工場について「女房、手術、金」と書かれていた。当時、ふみは山の事故によって下半身の自由を失い、車椅子生活を余儀なくされていた。歩けるようになるためには手術が必要だったが、金がかかる。密造銃をつくる発端はふみだ。次回第9回の予告に歩けるふみが登場しているが、これは事故前だろう。

 晴子についてはまだ謎がある。晴子を敵視する小池が第7回で「なんでこっちに戻ってきた」と詰問したが、その通りなのだ。晴子は「たまたま縁があっただけ」と軽く答えたが、そうとは思えない。

 直後、晴子は小池に向かって「笹岡さん、お元気ですか。刑事をやめさせられたんですってね」と口にする(第7回)。カウンターとなった。

 ここで気づかされる。未解決事件を追っていたのは田鎖兄弟ばかりではないのだ。晴子もそう。晴子は第7回時点でキーパーソン・笹岡の行方が分かったことを田鎖兄弟に伝えなかった。

 まず自分が下調べしようとしたのだろう。第8回には田鎖兄弟に笹岡の存在を話した。晴子は田鎖兄弟に向かって「もう時効よ」と言い続けてきたが、自分も事件から逃れられていない。だから蓬田町に帰り、笹岡の居場所を探し当てた。田鎖兄弟が両親殺害を調べるために県警入りしたのと同じく、晴子も父の死の真相を知るために新聞記者になったのだろう。

 小池は一連の事件を闇に葬り去りたいに違いない。事件当時の相棒だった笹岡の悪事を知らなかったとは考えにくく、加担していた可能性すらあるからだ。笹岡の懲戒免職時は左遷で済んだが、両親殺害事件への関与がバレたら破滅だ。

 刑法や民法と違い、警察官の服務規程違反に対する懲戒処分には法律上の明確な時効の規定がない。何年過ぎようが処分の可能性がある。そうでなくても小池は津田のノートの複製を今は一般人の笹岡に渡してしまったのだから。業務上横領、証拠隠滅に該当すると見られる。よほど隠したいことがある。

 小池は今も五十嵐組と通じているに違いない。だから稔の得た情報によって行われた同組へのガサ入れの情報が事前に漏れた(第7回)。田鎖兄弟が同組の掃除屋に行った件も小池は知っていた(第8回)。

 第7回に殺人教唆で捕まった市の相談員・秦野小夜子(渡辺真起子)が一連の事件に関係しているとは思えない。秦野は連行時、真に向かって「きっと、あなたは私に会いに来ると思う」と言ったが、これは真が事件の全容を知ったときに憔悴すると読んでいるからだろう。

 秦野の読み通り、絶望の結末が待っていると見る。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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