高知県の過疎化は他人事ではない 日本の社会がもたない「出生数67万人」という現実を直視すべき

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日本の人口は5,600万人になる?

 厚生労働省は6月3日、2025年に国内で生まれた日本人の子供の数、すなわち出生数を発表した。それは67万1,236人で、2024年より1万4,937人(2.2%)減少した。むろん1899年に統計を取りはじめて以来、もっとも少ない。しかも、国立社会保障・人口問題研究所は2023年に発表した将来推計人口では、出生数が67万人になるのは2040年だと見積もられていた。要は、国の想定よりも15年も速く少子化が進んでいるのである。

 少子化の速度を実感するためには、10年前の数字とくらべるといい。2015年には日本人の子供の出生数は100万5,677人だった。わずか10年で、子供の数は33%以上も減ってしまっている。その10年前の2005年は106万2,530人で、10年間で減少はしたが、その幅は5%強にとどまる。直近の10年でどれほど少子化が加速したか、ということである。

 2025年の出生数67万人1,236人をもとに考えてみたい。この年の新生児が全員、平均寿命まで生きると仮定しよう。日本人の平均寿命は男性が81.09歳、女性が87.13歳だから、男女の平均はおおむね84歳になる。そして、この出生数が今後もずっと続くと仮定する。すると単純計算で約84年後には日本の人口は5,638万人になる。これは冒頭で紹介した1920年の日本の人口とほぼ一緒だ。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計では、日本の人口は2070年に8,700万人になり、2020年とくらべた減少率は3割だという。だが、出生数が67万人になるのを15年も遅く見積もっていた機関の推計なので、かなり甘いのではないだろうか。

避けられない未来

 日本の人口は1984年以来、1億2,000万人台で推移してきた。それを支えていたのは、1950年に233万人、55年に173万人、60年に160万人、65年に182万人、70年に193万人、75年に190万人、80年に157万人、85年に143万人、90年に122万人、95年に118万人、2000年に119万人――という出生数だった。少しずつ少子化が進んでいるのはわかるが、それでも2025年の3倍強から2倍弱という数字で推移してきた。

 厚生労働省の人口動態統計速報によると、2026年1~3月の出生数は前年同期比で0.2%増えているから、すぐに50万人台になるという話ではないかもしれない。速報値は外国人等を含むため、日本人のみを対象とする年計概数とも条件は異なる。とはいえ、仮に出生数がもう減らなかったとしても、増えない以上、日本の人口はいずれ6,000万~5,000万人台になる。

 すると、冒頭で紹介した高知県大豊町が、人口にくらべて橋を過剰にかかえているのと同種の問題が、あらゆる方面で噴き出すことになる。住宅街もマンションも空き家だらけになり、水道も、下水も、道路も、鉄道も、なにもかもが過剰で、その維持費を捻出できず、さりとて壊す費用もない――。

 それは残念ながら避けられない未来である。できることがあるとすれば、だれもがその課題を直視して、いまのうちから縮小を意識し、拡大志向を意識的に遠ざけることだろう。

香原斗志(かはら・とし)
音楽評論家・歴史評論家。神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。著書に『カラー版 東京で見つける江戸』『教養としての日本の城』(ともに平凡社新書)。音楽、美術、建築などヨーロッパ文化にも精通し、オペラを中心としたクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』(アルテスパブリッシング)など。

デイリー新潮編集部

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