「これ何本か打ったらイチコロやねんでえ」…犬用の筋弛緩剤で5人殺害「大阪愛犬家連続殺人」、犯人の犬訓練士は「単に犬を利用していた」

国内 社会

  • ブックマーク

自分を怒らせる方が悪い

 が、この供述にBさんの夫は疑問を投げかける。

「Bは、人から勧められてもジュースやコーヒーは飲みません。ですから無理やり飲まされても量が少なくて効き目が浅かったんでしょう。だから殺された他の4人と違ってBだけ、両手は後ろ手に縛られ、両足はがんじがらめにガムテープで縛られていたんだと思います」

 被害者は勿論、残された肉親の無念は想像に余りあるが、上田は「悪いのはあいつら」というのだから驚く。事件をフォローしているフリー記者によると、

「金のトラブルであれ何であれ、原因はどうあろうと悪いのは相手の方だ、という考え方なんです。金を返せという方が悪い。自分を怒らせる方が悪い。責任は全て相手にあって自分にはないんだということのようです」

父親の死と前後して3人が行方不明

 この他責思考はいつ芽生えたのか。上田の生家は大阪府堺市の繁華街にある酒店。父親は入り婿だったが身持ちの堅い働き者だった。妹1人の長男として生まれた上田は、祖母から溺愛された。これといった非行歴もなく、むしろ友人に何か言われても言い返せずに黙って耐えている、気弱な印象の方が強かったようだ。

 大阪市内の高校を出ると、しばらくは家業を手伝うが、知人と建売住宅販売会社を設立したが失敗。その後、不動産会社、自動車修理業、外車セールス、長距離トラックの運転手などもするが、いずれもうまくいかず借金は7000万円にもなってしまい、昭和61(1986)年には親から勘当され「準禁治産者」(編集部注:旧民法で準禁治産の宣告を受けた者)にされてしまった。

 父方の親戚の1人は、

「宜範は、子供の頃は男の子か女の子か分からんようなおとなしい子でしたが、堺の家では甘やかされたみたいで、成人してからは家に寄りつかんようになったようです。事業に手を出し、失敗して借金を抱えたとかで、父親も手に余ったらしく“あの子は勘当した”と言ってきました」

 その父親が階段から転落し集中治療室に入った時、上田は病院に現れた。親戚は「連絡を取っていたのか」と驚いたという。確かに、一度は勘当したものの、銃刀法違反と業務上横領の罪で1年余り服役した上田が最後に頼ったのは肉親だった。平成3年8月に仮出所して地元へ戻った上田に、父親は住居とアルバイト先を見つけてやった。

 父親は1週間ほど集中治療室に入ったが、意識は戻らず他界した。その時期と、Eさん、Dさん、Cさんの行方不明は前後していた。

次ページ:何本か打ったらイチコロやねんでえ

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。