【栃木強盗殺人】なぜ16歳の少年4人は“69歳女性”と“飼い犬”を無慈悲に惨殺できたのか? 凶行に歯止めが利かないのは「非行少年ですらない“素人”だからこそ」と専門家
5月14日、栃木県上三川町の民家で強盗殺人事件が発生した。いずれも16歳の高校生4人が目出し帽を被り、バールや刃物などを持って侵入。69歳の母親と飼い犬を殺害し、長男と次男にもケガを負わせた。高校生の犯行としてはあまりにも残虐であり、SNSでは「信じられない」の投稿が相次いだ。東京未来大学の出口保行副学長は東京学芸大学大学院修了後、法務省に心理職として入省。全国の少年鑑別所や刑務所で1万人の犯罪者を心理分析した経験を持つ。
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出口氏は「私が少年鑑別所で心理分析した従来の非行少年たちと、闇バイトに応募する少年たちとを比較すると、人生経験や判断力が異なっていると言わざるを得ません。SNSの発達と闇バイトの誕生により、非行少年の人物像が全く変わってきています」と言う。
「指摘できるのは『犯罪者の素人化』という現象です。従来型の犯罪者は──つまり非行少年も含まれますが──軽微なルール違反から始まり、徐々に大きな犯罪に手を染めるようになっていきます。これを心理学では『モラルスリップ』と呼びます。最初は赤信号を無視することから始まり、万引きから窃盗、空き巣狙いと、どんどんモラル=規範からの逸脱がエスカレートしていくわけです。ただし、従来の非行少年は自分が手を染めてしまった非行や犯罪から“学習”する者が大半でした」
例えば窃盗容疑で補導されたり、逮捕されたりした非行少年がいたとする。彼らは捜査機関の事情聴取や裁判所での審理、場合によっては少年鑑別所での心理分析や少年院の矯正教育で自分が犯した罪に直面し、取り返しの付かないことをしてしまったと学ぶ。要するに「犯罪は割に合わない」ことが骨身に染みるわけだ。
「正常性バイアス」の影響
「従来の非行少年は、自身の犯罪から貴重な学びを得ました。そして犯罪に手を染めれば、その先に何が待っているのか予測できるようになったのです。犯罪の経験を持ったが故に、殺人や強盗といった凶悪犯罪を起こすことはあまりありませんでした。私が少年鑑別所で心理分析を行ったのは、多くがそういった非行少年たちでした。これをトクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)側の視点で見ると、従来型の非行少年をリクルートしても意味がないことになります。トクリュウが求めるのは“非行文化”に染まっていない少年なのです。何事でも経験値のない人間のほうが扱いやすい。非行や犯罪の経験がなく、先を読めない人間だからこそ、トクリュウは彼らを“駒”として利用することが可能になります」(同・出口氏)
昔は、こうした“駒”を探すのは非常に難しかった。それが一変したのがSNSの誕生だ。ネットで闇バイトの募集が可能になった。
「闇バイトに応募する少年たちはトクリュウの恐ろしさを全く知りません。彼らはニュースなど見ませんし、警察や教育機関の啓蒙活動も届いていません。それどころか『SNSを介しているから匿名性が高く、闇バイトをしても自分の安全は守られる』と信じてしまっています。こうした誤った判断を後押しするのが『正常性バイアス』です。災害時に言及されるので、ご存知の方も多いでしょう」(同・出口氏)
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