出産祝いに訪れた先で“産後のママ”と不倫したら、自分の母にも「秘密」があった 結婚という重荷を求める41歳男性の孤独

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母の異変

 やっぱりひとりがいい。そう思いながら30歳を迎えたが、田舎の母親からは連日のように「まだ結婚しないの?」「孫の顔が見たい」と電話がかかってくる。彼が高校生のころ、父が亡くなった。大学は子どものいなかった伯父がどうしても行けと言って費用を捻出してくれたのだ。伯父夫婦は浩太郎さんと3歳違いの妹をかわいがってくれた。

「その伯父も亡くなって、母は寂しくなってるんだろうなと思いました。だから僕に結婚しろとうるさいんだろうと。連休があったので、しばらくぶりで実家に戻ってみたんです。すると伯父の妻である伯母が来ていて、手招きされたんです」

 このところ、おかあさんがおかしいの。病院に連れて行ったほうがいいんじゃないと言われた。母はそのときまだ60歳にもなっていなかった。だが確かに歩き方も、どこかおぼつかない感じがあった。

「改めて平日に休みをとって病院に連れて行くと、がんが見つかりました。とはいえ、初期の胃がんだから、手術で寛解すると。むしろ、おかあさんはうつ病に近いのではないかと精神科も受診、そのとおりうつ病と診断されました」

伯母から聞かされた“母の不倫”

 何が起こったのかよくわからなかった。父が亡くなってからの母とは「点でしか接していない」し、高校生時代までの母はごく普通だったとしか言いようがない。いつから母が心を病んだのか、父が亡くなってから少しずつなのか、あるいは父の面影のある義兄(伯父)が亡くなったからなのか。

「伯母に報告すると、『こんなこと言っていいかどうかわからないんだけどね』と母のことを聞かされました。父が亡くなり、僕が進学のために家を出てから、伯父と母との関係が男女の仲だったと。耳を疑いましたよ。伯母も当時は離婚を考えたし、夫婦げんかも絶えなかったと。だけど『あの人も女だからねえ、40代で夫を亡くしたらそりゃ寂しいでしょと思って、見て見ぬふりをしてたの。夫は亡くなる間際に、ごめんな、弟が早死にしたからあの人がかわいそうでなと泣いたんだよ』って。なんだかもう、どう解釈したらいいかわからないくらい衝撃でした。唾棄したいくらいの嫌悪感と、母への憐憫と。もっと若いときに聞かされていたら、完全にグレてましたね。ただ、僕ももう30歳になっていたから、それは静かに受け止めたけど、内心は、説明できないくらいどろどろした気持ちだった」

そして母は…

 その一件は妹には言えなかった。妹は実家から車で1時間半ほど離れたところで家庭をもっていたのだが、それ以降は心配して、たびたび母の元を訪れてくれた。おにいちゃんも週末、来てよと言われたが、母の顔を見るのが怖くてなかなか行けなかった。

「それでも妹のおかげで、気持ちも少しずつ上向きになってきたみたいだったけど、最後まではがんばれなかったんでしょう。胃がんはすっかりよくなったのに、3年後には自ら死んでしまいました」

 生きる気力がなくなったのだろう。そう思って静かに母を送った。そして浩太郎さん自身も、「これからの自分の生きるよすが」みたいなものを考え始めたという。

「自分のためだけに生きていていいのかという思いですね。今思えば、それでいいんだよと言い切れるけど、あのときはそう思えなかった。生きている証拠というか、生きる気力のもとになるものがほしい。それがなぜか結婚だと思い込んじゃったんです」

 結婚したいというよりは、自分が死ななくてすむために「重荷や足かせがほしい」という気持ちだったと彼は振り返る。

コロナ禍を経て出会った相手は

 そして偶然、出会ったのが千瑛さんだ。35歳のときだった。コロナ禍で在宅勤務になったものの、誰にも会えないことが思った以上につらくなった。ひとりでいいと豪語していたはずなのに、本当にひとりになると体の中を木枯らしが吹きぬけるような思いにおそわれた。

「緊急事態宣言が解けてから、ビジネスホテルのワーキングユースみたいなものが出始めたんですよ。家で仕事をしているのがなんともつらくて、そういう場所を借りて仕事をするようになりました。ホテルのカフェなども徐々に営業していったころ、カフェでよく顔を合わせるようになったのが千瑛です」

 何度か顔を見るうち、会釈するようになり、カフェで少し話をする関係となった。

 ***

 ひとりを好み、結婚を避けてきた浩太郎さんは、母の死とコロナ禍の孤独を経て、千瑛さんに惹かれていく。記事後編では、千瑛さんの家庭で知る思わぬ事実と、結婚をめぐって浩太郎さんが抱えた違和感を紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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