「薬をやめれへん…彼氏にも愛想を尽かされてしもうた」 元マトリ部長が説く「薬物依存」や「ドラッグの健康被害」が女性にとってより深刻な理由
エストロゲンの影響
マトリを引退した筆者は、いま、薬物問題を調査・研究するチームに所属している。「薬物の効果や影響の男女差」についても、専門の研究室で学び、文献を読み漁っている。そうしたなか、男女には科学的な根拠に基づく「生物学的性差」と「社会心理学的性差」が存在することを理解した。その観点からも、「薬物は女の方が傷つく」「女性の方が依存しやすい」という美々姐の持論に間違いはなかったようだ。
少し専門的な解説になるが、薬物依存と性差についてはぜひ知ってほしい。とりわけ女性や、娘がいる読者にはご一読いただきたい。
まず、男性と女性では、体質や分泌ホルモンに大きな違いがある。この男女による違いが、摂取した薬物の効果や体内分布(薬物が臓器へ行き渡る現象やその割合のこと)、分解、排出に大きく影響している――。まずは大まかにそう理解してもらえばいい。
主に女性の卵巣から分泌され、女性の体内で多岐にわたって重要な役割を果たすのが、エストロゲン(卵胞ホルモン)である。このエストロゲンは、脳内の「報酬系(快感や満足感をもたらす神経回路の仕組み)」を刺激し、薬物の効果を高めたり、依存を形成しやすくしたりすることが明らかになっている。つまり、女性の方が薬物の効果を強く感じ、依存にも陥りやすいわけだ。
また、体脂肪と水分量の違いも大きく影響している。女性は男性よりも体脂肪が多く、体内の水分量が少ない。そのため、脂溶性薬物(油や脂肪に溶けやすい性質を持つ薬物)が体内に吸収・蓄積されやすい傾向にある。脳には有害物質の侵入を防ぐ関門(血液脳関門)があるが、脂溶性薬物はこの関門を通過しやすく、脳に強烈に作用する性質がある。そのため脂溶性薬物をより多く取り込む女性の方が脳へのダメージが大きいということになる。ちなみに、麻薬「フェンタニル」は脂溶性の高い薬物の代表格だ。
社会心理学的な性差とは
加えて、「女性はこうあるべきだ」といった社会的、文化的な慣習などに基づくプレッシャーや強迫観念。性的虐待、DVといった被害体験。また、子育てや人間関係のストレス、孤立感などが要因となって女性は薬物に逃避し、抜け出せなくなる傾向が強いという研究報告もある。
近年多発する市販・処方薬のOD(オーバードーズ)がそうだ。2021年5月~22年12月にかけて救急搬送された患者の8割が若い女性(平均年齢25.8歳)だったとの厚生労働省の調査結果がある。薬物事犯全体の検挙者数は男性の方が多いが、その一方で、こうしたケースが増えていることは軽視できない。
男性の場合は、「アイツが悪い」「社会が悪い」「オレをなめている」といった他責思考に陥りやすく、怒りを募らせて暴力的な解決方法を選びやすい。こうした傾向が現れるのは性衝動や攻撃性を高める男性ホルモン(テストステロン)、そして、「男はこうあるべきだ」という社会心理学的な要因が影響しているとされている。これも理解できるところだろう。
脳をはじめとするあらゆる臓器や機能が未発達、未成長な状態にある子供が薬物を摂取することは論外な話だ。これは誰もが理解できることだろう。しかし、生物学的な性差から、女性の方が薬物のダメージを受けやすいということは、それほど知られていなかったのではないか。
余談になるが、アメリカではかつて「コカインベイビー(妊娠中にコカインを使用した母親から生まれた新生児を指す俗称。親が摂取した薬物の影響で、生まれながらに様々な健康障害を抱えている)が社会問題となり、現在では「オピオイドベイビー(同じく妊娠中にオピオイド系薬物を常用していた母親から生まれ新生児の俗称)が大きな問題となっている。これも、女性が薬物を摂取することで生じた悲劇に他ならない。「ドラッグは男より女を傷つける」。みなさんにはどう映っただろうか。
前編【覚醒剤の密売で名を馳せた“美しすぎる姐さん”が「女には絶対にシャブを売らへん!」と言い続けた理由…「シャブは“女の骨までシャブる”んだ」】では“美貌の姐さん”との鮮烈なエピソードを詳報している。
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