日本人初カンヌ女優賞「岡本多緒」は「自分の信念に反することは絶対にしない人」 共演俳優が明かす“知られざる素顔”

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 濱口竜介監督(47)の映画「急に具合が悪くなる」の主演女優・岡本多緒(41)が日本人で初めて仏・カンヌ映画祭の最優秀女優賞を獲得した。彼女は日本では知る人ぞ知る存在だったが、世界でトップモデルとしてキャリアを築いてきたという。共演者らが語るその実像とは。

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環境問題を発信

 第1子を妊娠中の岡本は5月23日、シャネルのゆったりとした黒のカスタムドレスをまとい、授賞式に出席した。審査員から、ダブル主演を務めたビルジニー・エフィラ(49)と共に最優秀女優賞の共同受賞者として名前を呼ばれると、目に涙を浮かべた。

 壇上で岡本は流ちょうな英語を駆使しながら、

「本当に信じられない。私のような平凡な日本人女優が今日ここにいるのは、素晴らしい監督のおかげです」

 と、あいさつして喜びを爆発させたのである。

 在仏映画ジャーナリストの林瑞絵氏が言う。

「授賞式はフランス国内でテレビ中継されました。最優秀女優賞の授賞の際に会場の熱気は最高潮に達し、エフィラさんと岡本さんが抱き合う場面で350万人の瞬間最高視聴者数を記録しました。濱口監督に岡本さんの魅力について尋ねると、“彼女はある種の軽やかさがあるが、芯もあり、理性的な内なるものを直接表に出すわけではない。そこが原作者で哲学者の宮野真生子(まきこ)さんと似ている”と評価していました」

 岡本は14歳でモデルとしてキャリアをスタートさせた。2006年に渡仏後、TAOの名義でパリやニューヨークで活躍。独特なヘアカットは“TAOヘア”として世界中で注目された。映画「ウルヴァリン:SAMURAI」で13年に女優デビュー。私生活ではチベット系スイス人で雑誌編集者の男性と結婚している。

 夫とファッション・ブランドを手がける傍ら、ポッドキャストで環境問題も発信する。3年前には、自身で企画・脚本・主演を務めた短編映画で映画監督デビューも果たした。

“正直な人”

「彼女に“おめでとう”とメッセージを送りましたが、“周りが五輪で金メダルを取ったみたいになってる!”と驚いている様子でした。彼女とはニューヨーク時代からの付き合いで、かれこれ9年ほどの仲です。一時期、ロサンゼルスで彼女と旦那さん、それに猫2匹と1年ほど一緒に住んでいたこともあります」

 と語るのは、短編映画で彼女と共演もしている俳優・劇作家・演出家の曽我潤心氏だ。

「女優としてセンスも才能もありますが、なにより“正直な人”です。芸能界にいるとうそが当たり前になりがちですが、彼女は自分の信念に反することは絶対にしません。ヴィーガン(完全菜食主義)だったこともあり、動物愛護活動をしています。大きなブランドの仕事でも、エキゾチックレザーを使っているなどの理由で、自分の考えに合わなければ断ってしまう。人権問題への関心が高く、人種差別についても勉強しています。一緒にBLM(ブラック・ライヴズ・マター)のデモに行ったこともありました」(同)

 過去にNHKの番組で彼女と対談したことがある音楽家・文筆家の菊地成孔氏は、

「トップモデルにありがちなエレガント過ぎる振る舞いや、ぶっ飛んだ感じもなくてね。同級生にいてもおかしくないと思わせるような、純朴な魅力を持った方です。大きな賞は時に重荷になることもある。でも、彼女なら世界中の監督が欲しがるような、より深みのある演技派の女優になってくれると期待しています」

 そうエールを送る。日本の芸能界の価値観に染まらず、確固たる信念を持つ彼女が、今回の受賞を機にますます活躍の場を広げそうだ。

週刊新潮 2026年6月4日号掲載

ワイド特集「スポットライト」より

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